topへ戻る

ホーム中心市街地活性化関連フォーラム資料庫


都市経営フォーラム保存版

TKF042-3■藻谷理論の批判的検討

1.テキストの対象地区の現状と分析
(2)佐世保市中心商店街

■佐世保市中心商店街

ずは当サイト過去ログを紹介しておきましょう。
http://www.quolaid.com/library/kakuchi/kakuchi6.htm
【No112】「佐世保市四ヶ町」の記事です。ちなみにこのあたりには西日本新聞の特集「開けシャッター」に取り上げられた九州各地の商店街、商業集積についてのレポートに対する論評を収録しています。
お暇な方はどうぞ。

では佐世保市中心商店街について。

1.位 置
 佐世保市中心商店街、約1qにわたる四ヶ町、三ヶ町と称されているアーケード街。JR佐世保駅〜市役所の間に位置しています。大型店は、百貨店:玉屋、量販百貨店:ジャスコ、他に大型ファッションビル:西沢が2店あります。
 平日でも結構な人出。ライバルといわれる郊外のショッピングセンターよりも格段に多い。
 「日本一元気な街」と評されていますが、どうしてこんなに人出が多いのか「誰にも分からない」らしい。
 イベントなどに積極的とのことですが、イベント目的の来街ならイベント当日だけのはず、もっと他に理由があるはずです。

2.商 圏
 佐世保市は、長崎県北部に位置し長崎市と県内商圏を二分しています。(ただし、県の中央部には大村、諫早市がありそれぞれ独立商圏を作っています)
 佐世保市の商圏は、東南方向に東彼杵郡及び佐賀県西部(有田町、西有田町、伊万里市の一部)、 西部方面は平戸市、松浦市、北松浦郡です。郊外型の一大商業集積である大塔地区は、東南商圏からの市への入り口にあります。

3.競合関係
 テキストに紹介されている、大塔地区は、東南の商圏から市中心部に向かう国道35号線に沿ってイオンショッピングセンターを始め、スーパーマーケットやカテゴリーキラーなど、郊外沿線型商業がたくさん立地しています。中心部〜大塔間の交通は上記の国道35号線だけ、この道路は終日混雑しています。
 市北部に目を転じますと、佐世保市〜平戸市間に郊外型商業集積は全くと言っていいほどありません。佐世保市大野町から平戸市、松浦市に至る地区に住んでいる住民にとって、一番近い商業集積は郊外型集積ではなく、佐世保市中心商店街なのです。
大野〜平戸の住民が郊外型集積に行くためには、佐世保市中心市街地を通過し、混雑する国道をとおって市の反対側である大塔地区まで出かけなければならない。

 このような商圏の特性を把握し、さらに「郊外型ショッピングセンター=人工商店街論」を踏まえると「四ヶ町の人出」が理解できると思います。

※「人工商店街」について初見の人は、お手数ですが当サイトポータルページで[サイト内検索]をクリック、出て来るテキストをチェックしてください。これは以後の考察を理解するために必須の作業、必ず行っていただきますよう。最低、次のテキストは必読
http://www.quolaid.com/library/sforum03/s082.htm
 内容が良く理解できなかったら他のテキストもぜひ読む、掲示板に書き込む、メールで質問するなど、工夫を凝らして理解してください。


▲四ヶ町の賑わいの理由はなにか?


 藻谷さんのテキストに書かれているさまざまの要因の他に、重要な来街目的として、ショッピングがあります。

 人々が四ヶ町に出かけてくるのはそこに「買い物の場」が集積されているから。中心市街地の商店街、他の都市では集客出来なくなっているのにどうして出来るのか? 考えてみましょう。

第一。
商圏内におけるファイナルデスティネーションの位置を長い間確保していた。

第二。
商圏の半分からは現在でも中心商店街がもっともアクセスしやすいショッピングセンターである。

第三。
人出をあてにした新規出店が相次いだ。

 これらの結果、奇跡の1q、「日本で一番元気な商店街」が存在しています。ただし、この元気が果たして個店の元気=繁盛につながっているかどうかは後ほどあらためて考えてみたいと思います。

以下、順に解説します。


▲第一の理由
> 商圏内におけるファイナルデスティネーションの位置を長い間確保していた


 佐世保市四ヶ町は、百貨店:玉屋、量販百貨店:ジャスコの2核を備えた全長1qといわれる巨大ショッピングモールです。モールにはサブキーとしてファッションビル、アミューズメント系も立地しています。
 私は郊外のショッピングセンターを「人工商店街」だと揶揄するのですが、あらためて四ヶ町を見ますと「自生的ショッピングセンター」と言えないこともない(笑)
 で、規模はどうかと言いますとこれは断然四ヶ町が勝っている。

 佐世保広域商圏における郊外型商業集積は、大塔地区にしかありません。同市の商業事情が他都市と大きく異なるところですが、その理由としては、第一に市内に平地が少ないこと、第二に他の地区にはまとまった消費人口が集まっている地域が無いこと、の二つが考えられます。
 他の都市では全周的に立地している郊外型商業が佐世保市の場合、中心市街地を挟んで概ね南北に分かれている人口分布のうち、北部にしか立地していない、ということ。

 大まかに言って佐世保市の場合、平地といえばJR佐世保駅〜市役所をつなぐ、四ヶ町、三ヶ町およびこれと平行して中心市街地を縦貫している国道沿線しかありません。(海側は米軍用地など)新しい商業街区が出てくる余地がなかったことが長年に渡る四ヶ町独壇場の立地的要因だったと思います。

 北部の住民にとって最近距離にある商業集積(ショッピングセンター)は、昔も今も四ヶ町ということになります。
 この北部地区の消費購買力が佐世保市中心商店街の空洞化を押しとどめる、他の都市では見られない大きな要因だと思います。

 北部の住民が中心商店街を横目で見ながら、大塔の郊外型SCに出かけることはないのか?



▲第二の理由
> 商圏の半分からは現在でも中心商店街がもっともアクセスしやすいショッピングセンターである。


 既述のとおり、北部商圏から中心市街地までのアクセスは比較的容易ですが、ここを通過して大塔に至る経路は国道が一本しかなく、佐世保市と外部を結ぶ広域動線ですから常時混雑しています
(西九州自動車道はあまり利用されていない)。
 この混雑を覚悟して出かけるには相当のデスティネーションが必要になります。
 四ヶ町vs大塔のショッピングセンター間競争では集積度合いに格段の差がありますから、中心商店街と真っ向バッティングする大塔のショッピングセンターには、中心商店街を横目で見ながら・混雑する狭小なアクセスをものともせず・わざわざ出かけるほどのデスティネーションは無い、ということです。

 他方、同地区に立地するカテゴリーキラー業態は、それぞれ独自のデスティネーションを持っており、こちらは佐世保市商圏全域から集客していることでしょう。しかし、この客相はショッピングセンターには向かいません。(四ヶ町と使い分け)

 佐世保市広域商圏の特殊事情は、他都市の中心商店街の空洞化の原因である、郊外型集積との競合が相対的に少なかった、ということを意味しています。前述のとおり市内には平地部が少ないことも、少なくとも中心商店街にとってはプラスでしょう。

 さらに、中心商店街には郊外の人工商店街のテナントミックスには無いレベルの「専門店」も立地しており、全体としての集積度合いはSCの及ぶところでは無い、ということも今一度強調しておきましょう。
 ただし、大塔以北の商圏については相当の影響を受けており、四ヶ町の業績がSCの開設でグンと落ち込んだことは否定できません。


▲第三の理由
> 人出をあてにした新規出店が相次いだ。


 後ほどあらためて論じますが、中心商店街の各個店、けして「日本一繁盛している」わけではありませんからね。ここのところ、誤解しないようにしてください。「人出は日本一」かも知れませんが、立地する個店の業績がそれに比例しているわけではありません。

 数年前には空店舗が30店舗近くあって相当危機感があったようですが、一時期ほとんど解消されました。

 新しい出店は、ドラッグストア、百均、ティスカウント理美容、ゲームセンター、居酒屋など、私が命名するところの繁華街業態、店前通行量をあてに出店する業種・業態がほとんどです。一時期、これらが踵を接して出店したため、空店舗が無くなったのです。
 ただし、減ったのは上記の業種業態に適した店舗面積=中規模以上の店舗だけ、小さな店舗は依然として空店舗のままだったと記憶しています。

現在、再び空店舗が見られるようになっています。これは、
@上記の業種業態の出店が一段落したこと。
A既存個店の業績が一段と悪化したこと。
によると考えられます。

 つまり、人出は多いが個店が繁盛しているわけではない、というのが佐世保市中心商店街、四ヶ町界隈の実態だと思います。


 もちろん 藻谷さんが指摘されている、
@非物販の集客機能が街区周辺に点在していること、
A四ヶ町の賑わい自体が吸引力を持っていること、
も大いに関係しています。

 しかし、@及びAだけで現在の四ヶ町の状況を説明するのは無理だと思います。
上で検討したような地勢及び広域商圏レベルの条件があってはじめて佐世保市中心商店街の「日本一元気な商店街」現象は説明可能だと思いますが如何でしょうか。

 商業集積、漠然と人通りが多いから良く売れる、といった商店街全盛時代の常識は現在では全く通用しないのだ、
ということはしっかり理解しておくことが必要です。
さらにもうひとつ。
 四ヶ町の、人通りは多いが個々のお店の入店客は極端に少ない、という現象も見逃すことは出来ません。

さて、四ヶ町の人出を考えられる来街目的で区分してみますと、
@非物販集客施設からの回遊客
A繁華街型集客施設のお客
Bショッピングセンター客(大野、江迎、平戸、松浦などから)
C専門店客(商圏全域)
Dその他
というように考えられます。

 他都市と大きく違うのはBですね。@についても今となっては相対的に「恵まれている」かも知れません。
 ただし、だから繁盛店が多いと言うことにはなりません。
 もちろん、別の要因で来街したお客がショッピング客に変貌する、というのはいつでも・どこでも期待されることですが、もともと買い物するつもりの無かった来街者に衝動購買を促すには「店づくり3点セット」がよほどしっかり作られていることが前提になります。
http://www.quolaid.com/library/sforum02/s031.htm
 中で「衝動購買」を説明しています。
果たして四ヶ町の個店群に衝動購買を惹起する力があるかどうか・・・。

 Bについては中味が問題です。
 四ヶ町の場合、集積としての特徴は「価格訴求」タイプだと言うことです。家電、カメラ、めがね、ドラッグその他、郊外型カテゴリーキラーが目白押し。既存の専門店も多くが店前通行量ねらいの価格訴求型に変貌しています。
 このあたりの事情については、
http://www.quolaid.com/cgi2/topics/topics.cgi 
に写真付きで書いています。
 四ヶ町の活性化への方向も他都市同様「ショッピングモールへの転換」以外にないことを論じています。


▲タウンウオッチング
 
 ひと頃、商店街では「通行量調査」という事業が流行りました。
 街の要点にカウンターを持ったアルバイトの学生を配置、何人の人が通ったかを算定
グラフなどを書いて一喜一憂していたものです。
 最近ではあまりの激減ぶりに数える気力も無くなっているところが多いような・・・。

 私淑する島田陽介先生は、かって、「通行量? 何で人間だけなの?犬も数えたら?」 と喝破された。
 もちろん犬を数えろと言うことでななくて、商業機能にとって店前通行者数などは犬を数えることと同じくらい無意味だ、ということです。
 活性化の目標を「通行量の増大」として、中心市街地の通行量 ○千人/日という目標数値を掲げている例があるそうですが・・・。


商業集積を見る場合に大事なことは、
@どういう人たちが来ているか
A何をしているか

ということと
B集積の品揃え(店揃え)・サービス・環境
の適合状況をチェックする、という視点です。

 おらっちはショッピングモールだかんね、と言ったとしても、実際のところ、そこが何であるかということはそこで何が起きているか、ということで決まるわけですからね。

 佐世保市の中心商店街では何が起きているか?
 確かに人はたくさん歩いています。
 ではこの大勢の人たちは、何者で・何をしているのか? 
 とおりではどのような情⇔景が繰り広げられているのか?
 なぜそういうことが起きているのか?

 これらを見極めて初めて、商業集積を見た、ということが出来るのであって、商業集積が分担する機能などもしっかり見極めないと「モデル」などには使えません。


▲店揃え


 商業集積としての特徴は、なんと言っても「価格訴求」型の店舗が多いこと。

 家電、カメラ、ドラッグ、めがね、百均などに限らず、既存業種の衣料品、薬局、眼鏡店などもほとんどが価格訴求型。
 店頭に平台、ラックを張り出して店頭通行人を対象にした、価格訴求・衝動購買客ねらいという業容の店舗が軒を連ねています。

 いわゆる中心商店街特有の買い回り型店舗が少ないのが特徴で、同規模都市の中心商店街の様相とはだいぶ違います。

 全体として見た場合、ここの品揃えと郊外のショッピングセンターを比較したとして、
どっちがどっちかといえば、街に来ている人のなかには、ショッピングセンターの商品は高い、という印象を持っている人がいるかも知れません。

 ここに立地している専門店は、集積としての条件ということでは、既述の通り、ちょっと厳しい。


次へ
藻谷理論の批判的検討目次へ

Copyright (C) 2006(有)クオールエイド  All Rights Reserved