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S040■合意形成という段階

2002/12/11(Wed)

 中心市街地活性化ではさまざまの分野、局面で「合意形成」ということが求められます。この合意形成というのがまた曲者ですね。

 日ごろ、中心市街地を取り巻く環境の変化や活性化するために不可欠の自分たちの仕事などについてあまり考えたことのない人たちが集まって、大はまちの将来のあるべき姿から小は今度の販促事業について、話し合い、一定の合意に達し、実現に取り組んでいく、ということが想定され、第一段階として取り組まれるのが合意形成です。

 活性化事業で行われる合意形成は、「活性化事業」の目的である、事業の結果街及び各個店の業績はどうなるのか、という肝心のことは全く問題にされないまま、「こういう事業をやってあげます、ついてはこれだけ拠出してください」という「合意」であることが多い。自店の現状と無関係に実施され、その成果が自店にどう影響するかも定かではない事業においそれと拠出の合意が出来るわけがない。総論時点では賛成したものの、実際に事業に着手するとなるとちょっと待った、ということになりかねません。「合意」要求されているを内容が自店の行動・命運に関わることだという認識がありませんから。

 もちろん、合意形成の中身自体が「これをやれば活性化するがやらなければ街は消滅する」というような計画になっていることはきわめて少なく、たいていは現状にプラスアルファする事業のことが多い。とても自店の命運を賭ける覚悟を要求するようなものではありません。
この時期、そういう無難といえば無難な、無意味といえば無意味な計画に資金を負担することを合意するのは本当に難しい。
基本計画策定以来の「合意」はたちまち吹っ飛んでしまいます。

 多くの取り組みがこういう状態に直面しているのではないかと推測されますが、これはこれまでの「中心市街地活性化」の取り組みのありかた自体がもたらしたこと、次回はこのあたりを考えてみたいと思います。

まず目的・目標を共有する

 事業についての合意形成の前提となるのは、目的が共有されていることです。このことが意外と置き忘れられているところが多い。不思議なことですが。

 通常、事業は、
@何らかの目的が先行して確立されている
A目的を達成するための目標が分かっている
B事業に取り組む環境が把握されている
C調達可能な資源群をもって目標を達成していくシナリオが描かれている
という前提条件が整備されてから計画されるものです。
 このような作業が行われないまま「計画」が立てられても、そういうものを計画と呼ぶことは出来ません。いえ、呼ぶのは結構なんですが、それはなんのための計画ですか? ということですね。

 中心市街地活性化への取り組みでは、『基本計画』を策定する段階でこのような不可欠の作業をパスしてしまったところがあるようです。一例を挙げれば、「活性化」というコトバの定義。
 『基本計画』の目標は、もちろん中心市街地の活性化ですが、中心市街地街が活性化されるとは中心市街地にどのような状況が生まれることか、という肝心のことが定義されていません。このコトバを定義することがイの一番の仕事、これが定義されていないということは全体の事業の目的が明らかにされていない、ということを意味しますからね。

 全体の目的が明かでないままに「目標」が立てられる。例えばTMO事業などで取り組む事業です。TMO事業は中心市街地活性化という上位目的の達成にどのような意味を持つのか、他の目標達との関連はどうなるのか、などといったことはほとんど説明されていません。とても考えられない事態ですが、これが当たり前、これでよいと信じて疑わない関係者(計画つくりの専門家であるはずのコンサルタントを筆頭に)が見受けられる。

 このような「活性化」という言葉の意味さえ共有されないまま、活性化のためと銘打たれた事業群について合意が図られます。たぶんこの時点では「いいことだ、出来るならやった方が良い」ということでおおむね「合意」でしょう。問題は実施計画つくりの段階で現れます。

 いざとなれば新に賦課も発生するわけですから、この時期、おいそれと事業に合意することは出来ません。なにしろ「活性化事業」が組合員・商店主の事業にどのように役に立つのか、役に立てるためには個店はそれぞれ何をしなければならないか、といった全体像は見えていませんから、単純に、この事業に参加すると自店の業績は好転するかどうか、ということを考えてしまいます。もちろん、シャッターの外側の単発事業で業績が好転するということは有り得ませんから、答えはノーです。そうすると事業への参加もノーとなり、事業の合意は成立しない、ということになります。

 このような段取りでは合意に至ることが難しい事業でも、目的〜目標〜シナリオがきちんと作られている場合には、すんなり合意される可能性が高くなります。こういう時期ですからいろいろ意見は出るでしょうが、議論を重ねること自体が事業全体の正しさ・不可欠性を確認するプロセスになる。平行して取り組まなければならないシャッターの内側の仕事にもあらためて意欲が喚起されることにもつながります。

 中心市街地活性の目的は、当該地区が収益事業立地として活用されることであり、とりわけ現に立地している小売集積=中心商店街が活性化されることです。中心商店街の活性化とは、商店街がラグジュアリィニーズに対応するショッピングモールに転換することで、全体として永続的に業績を確保出来る、繁盛するという状況を作り出していくことです。
 個店レベルでは、@経営の維持拡大に必要な粗利が確保できる・A新しい設備投資が可能になる・B後継者問題が解決する、ということですね。常々申しあげているとおり。

 目的、目標が掲げられ、かつ、達成の方向が明らかにされており関係者に共有されている、という前提条件が整備されている、それらを踏まえ・それらに貢献する方向で個別事業の取り組みが計画される、というのがあるべき合意形成の段取りです。
 段取りを無視して、目的も定かでない、ただ計画に記載(総論賛成)されているからといって、個別・賦課つきの事業を計画してもなかなか合意が得られないのは当然といえば当然です。街の全体状況から切り離された単発事業ではなんの効果もない、ということは商業者の皆さんには一目瞭然でしょうから。

 長くなりましたが、事業の合意を得るためには(と言うよりもむしろ本当は事業の成果を期待するなら)、事業計画の立案に先立って『基本計画』レベルの合意、中心市街地活性化の目的・目標、とりわけ「活性化」というコトバの定義について、しっかり合意(あるいは確認)することが必要だということをあらためて説明してみました。

  「活性化とは中心市街地にどのような状況が生まれることか」、明らかにされている『基本計画』はそう多くはないと思います。まして、その目的は、中心市街地が本当に繁盛する、立地する店舗が軒並み繁盛する、という状態を実現する=繁盛する活気ある中心市街地の再現し住民の生活をより豊かにすることにあると言うところまで到達している計画は本当に少ないと思います。このような目的がはっきり認識されていてはじめて、「商業等の活性化のための事業と街区整備のための事業を一体的に推進するための目標」=ショッピング(ラグジュアリィ)モールへの転換を目指す、という『基本計画』の最高位の目標が明らかになります。

 この転換は目的も実際の仕事も個店・商業者の取り組みが不可欠であることはご明察の通りです。まず、この全体像についての認識が共有されることが必要です。全体の取り組みと個店の取り組み、全体の活性化と自店の繁盛が一体・不分離となった計画である、という認識が共有されないと個別事業への参加の合意形成は難しいでしょう。よしんば形成に成功しても事業の結果は活性化にはつながりません。そうすると次期以降の事業取り組みに支障が出ます。現にそういう段階に直面している都市もあると思います。

 あらためて『基本計画』レベルの見直し・合意形成の再確認が必要になっていると判断するのは、部外者の偏見でしょうか?