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S021_2■基本計画の自己診断・チェックリスト(2)

2002/05/31(Fri)〜


天敵?郊外型SCの分析

 昭和50年代以降30年に及ぶ商店街振興施策は、消費者対応というよりもダイエー、ジャスコなど量販百貨店(はじめは商店街内に立地していた)対策だったといって過言ではありません。
 当初の「商店街活性化」とは、街区の施設やサービスを少しでも量販百貨店に近づけることでした。
 アーケード、カラー舗装、コミュニティ広場、ポイントカード、集客イベントetc., 典型的な省思考(自分の頭で考えない)スタイルの仕事でしたが、それでも量販店が街区内にある場合(量販店の面積も狭小で)はそれなりにお客の回遊があり、隣接する出遅れた商店街との競合に勝つことが出来て、「活性化」が実現したものです。
 当時、活性化に成功した、といわれる商店街にはそちらにお客を取られて完全に没落した商店街がワンセットで存在したものです。

 商店街活性化のパターンは、商調協全盛時代にはそれなりに有効でしたが、やがて出店が緩和されてくると量販百貨店が郊外に移転、多数のテナントを組織してショッピングセンター(以下、単にSCと略記します)へと拡充する時代に移り、従来の活性化策はまったく役に立たなくなりました。それはそうでしょう。いままでの活性化策は、街区内の量販百貨店と共存するための施策であり、SC対策ではなかったのですから。

 今日、「中心市街地の商業集積」という規模での中心商店街活性化が叫ばれているのは、SCの直撃で商店街の「核」であった量販百貨店が壊滅、その過程でこれと歩調をともにきた商店街も衰退する、という状況が全国で起こっているからであることはご承知のとおりです。
 これは地域の中心的な買い物の場が自然発生的な商業集積=商店街から、郊外の人工的な商店街に移動したことを意味しています。いわゆる「商業集積間競争」が起こっており、同じ性格の買い物なら圧倒的に便利なSCに軍配が挙がっている、ということです。
 ところが活性化施策はこのような事態の変化に対応し切れていない。
活性化法に基づいて作成されている基本方針では、「従来は、点、線の施策にとどまっており、面的な対応になり得ていなかった」と指摘していますが、これは「集積間競争」という新しい競争様態への対応が必要だ、ということであると理解すべきでしょう。

 もの余り&店余り時代、SCが全国津々浦々にまで普及し、中心商店街は「核」をはじめその影響をもろに受けているということは、消費の質も購買行動も従来とは大きく変わった、ということを意味します。
 本来ならこの変化を的確に把握して対応する方法を案出し実行する、ということに取り組まれなければならなかった。これをサボり、商調協(開店時期を延期したのは商店街が対応処置を講じるための猶予期間という位置づけだった)などを盾に安穏と従来通りの施策に終始した、というところに現在の危機の根底があるのだ、ということに気がつかなければいけないのですが・・・。

 さて、基本計画のチェックです。
 SC全盛時代に商店街の活性化を目指す、必ず再生させるということで方策を考える場合、まずやらなければならないことは、天敵?SCの正体を見極めることです。
 地域の消費購買行動から圧倒的な支持を受けているSC=郊外型ショッピングセンターとは何者かということを見極め、その長所と短所を見極める、商店街の長所と短所もしっかり把握した上でSCとの戦略的関係−競合か、棲み分けかなど−を決定することが最初の仕事です。
 古今、敵を知り己を知り、戦略を決定して始めて施策が考案される、というのが戦争・競争の当たり前のやり方でしょう。

 ところが、多くの『基本計画』では必須課題である「SCに対する戦略」がまったく考えられていない。ほとんどの計画がまるでSCなど商圏内には一つも存在しないかのような内容になっています。
 確かに「商圏内の大型店の分布」などという項目で位置図と店舗面積が一覧されていたりしますが、それはただそれだけの話、商圏内に立地するSCの類型や特徴、将来展望や商店街との競合関係などはほとんど触れられていません。
 だから○○する、という話にはなっていないのです。
 これは本当は、「基本方針」には示されていない環境分析とでもいうべき一項を設けて詳しく分析しなければならないところです。

 『基本計画』は、大型SC全盛とも見える現在〜将来において、「にもかかわらず、こうすれば中心商店街は活性化できる」という内容でなければ役に立ちません。このことに疑問の余地は無いはずです。
 しかし、どういう訳か(笑)、皆さんのまちの『基本計画』からはこのもっとも重要な課題がすっぽり抜け落ちているのです。

 このことを抜きにして、「もの余り時代」だから物販では集客できない、もの以外のソフトや非物販の集客施設で集客しよう、などという省思考・短絡発想の計画もあったりする。
 もの余りだからこそ「如何にものを売るか」という「もの離れ対策」に日々精進しているSCの存在を無視して、文化や歴史に逃げる、あるいはコミュニティ機能とやらを担ぎ出す・・・。
 中心市街地活性化が中心商店街活性化であり、商店街=物販機能の集積であることを考えるなら、これらはハッキリ全部間違いであるといわなければならない。
 文化や歴史、コミュニティとショッピングでは来街目的=街に対する期待がまったく違います。非物販での来街客のショッピングはファーストフードと自動販売機でほぼ充足されるでしょう。このような方向では商店街が物販機能として再生することは不可能です。

 長くなりましたが、皆さんの『基本計画』、肝心の郊外型ショッピングセンターへの対応、という視点がすっぽり抜け落ちていませんか?さて、どうしますか?



SC分析が導くところ

 今をときめく(?)郊外型ショッピングセンター(以下単にSC)とは何者か? 当社の認識についてはこれまでにあちこちで述べています。
 端的に言えば我が国のSCとはかっての中心商店街を郊外に移転させたものであり、確かに立地や建物については計画的といえば計画的ですが、地域において他の商業集積と機能を分担する商業機能、という意味では明確なコンセプトを持っておりません。
 「たくさん売れるものなら何でも売る」というコンセプトのもと、生鮮食品からファッションまでフロア狭しと積み上げている量販百貨店が核店舗、かって中心商店街に軒を並べていた専門店が基本的に当時と同じコンセプト、技術、店づくりで出店している、ということですね。商店街が車立地に移動してリニューアルした、というのが「日本型SC」の正体です。
 このことが理解され、さらに現在の消費生活購買行動からあるべき商業機能を類型化して考えてみれば中心商店街が転換を目指し、独占的に担うべき新しい小売集積=ショッピングモールの可能性が見えてきます。

 以上は私どもの認識であり、理論を前提として始めてSC分析が可能になり、さらに「あるべき商業機能の3類型(Web商人塾テキスト参照)」から当社の中心商店街の活路=ショッピングモールへの転換、が成立するわけです。
 私どもの中心商店街活性化=中心市街地活性化策の提唱は、SCの正体とその将来を見極めた上で活性化への取り組みの「一体的推進の目標」をモールへの転換と定めているわけですが、ここであらためて当社の自画自賛をしても始まらない。未読の人は是非前述のテキストを参照してください。

 さて、理論的な立場はどうであれ中心商店街活性化を目指すとき、「目の上のたんこぶ」であるSCについて、これをどのように見るか、ということは絶対に避けて通れない課題です。
 とりわけ、SC=我が国(世界?)商業の最高の形態などと漠然と考えている専門家の支援のもとで取り組まれた計画作りの場合、SCとの関係を見定め、「SCの存在にも関わらず中心商店街はこうすれば活性化できる」という方策を決定することは基本計画のメインになっているべきではないでしょうか。SCを先進商業と理解している皆さんにとって、中心商店街活性化策=郊外型SC対策でなければならないはずです。

 それなのに見てみない振りをしているということは、これはもう、SCにははなから勝てない、と諦めていることの証ではないでしょうか? 違いますか? 違うというならどうして「郊外型SCへの対応」ということがただの一行も一言も出てこないのか(笑)? 基本計画に記載されている基盤整備と商業活性化策でSC対策は本当に十分ですか? 
 
 開設以来、中心商店街を衰退させ、かげりが見え始めたとはいえ今なお商圏内においてダントツの集客力を持つ郊外型ショッピングセンターについて耳目をふさいだままで「商店街の活性化」は無いでしょう。
 さらにいえば、「SC=最高・最先端の商業機能」といったレベルの知見で作られた計画は、「SCさえ存在しなければ商店街は活性化できる」という内容にさえ到達していないはずです。
 重ねて言いますが、もの余り時代において、ものを売ることが社会的な役割である商店街を活性化しようというときに、歴史と文化、コミュニティ機能の充実などなど、物販以外の要素を整備充実させるることで買い物客を集める、という認識・姿勢は問題を完全に見誤っています。このことはあらためて論じます。

 SC対策、別に明文化されて無くてもいいんですよ。一読すればSC対策を踏まえた計画か否か、ということはたちまち分かりますからね。
 皆さんも「わが基本計画に計画されている基盤整備及び商業等の活性化の事業を整斉と進めていけば郊外型SCの命運とは関係なく中心商店街は活性化できる=そこに立地する個店群は繁盛する」といいきれるかどうか、こういう視点でもういちど基本計画をチェックしてみてください。



非物販機能の整備

 中心市街地活性化が産業立地としての再生=商業機能の再構築という文脈で取り組まれる以上、「活性化法」に基づく施策は、商業機能の再構築という方向で統合されていることが望ましいことは分かり切ったことです。
 中心市街地の状況は、あれもこれも、何でもいいから目に付くもののうち取り組みやすそうなものを整備すれば活性化が実現する、というようなことはありません。当然のことながら。どこのまちでも限られた人材、資源での取り組みですから、戦略的な集中が必要であることに異論はないと思います

 多くの都市の基本計画に「非物販」の集客機能の整備が掲げられています。
もちろん、都市の中心市街地が例えば観光地のように物販以外の集客機能・施設・産業の立地として活用されているところは別です。そういう都市では当然ながらそれら非物販の集客機能の整備が大切な取り組みになることでしょう。

 それらの都市も含めて、中心市街地への集客要因として新しい機能の設置が計画される場合。

 新しい非物販機能の設置は、シビアに目的を再確認し目的達成に本当に寄与する、それも他の手段ではとてもここまでは出来ない、という役割を果たせることがしっかり確認されることが必要でしょう。さらに施設自体の独立採算性の確保も大切なことは言うまでもないことですね。
 たとえ設置段階では有利な条件が確保されたとしても、運営段階では相当の負担が継続的に発生することを覚悟しなければならない。厳しいコストパフォーマンスの検証が必要になります。

 シビアな検討をエクスキューズする理由として、中心市街地の集客力の向上、集客と商店街への回遊の実現、などが主張されて、施設本来の目的よりも商店街のための人寄せパンダという機能の方が大義名分になったりして、話がコストは掛かるが集客力向上のためにはやむを得ない、という方向に行ったりすると大変危険、虻蜂取らず、という結果が生まれかねません。

 第一に、この時期にこの法律に基づいて中心市街地にわざわざ設置しなければならない非物販の集客施設、とはいったいどのような機能でしょうか? 多くの都市がバブルまでの時期において作るべきほどの施設はほとんど作り終えている今日、都市内外から多くのお客を吸引する機能を持つ都市に未整備の非物販施設が考えられるだろうか?ということです。
 第二に、たとえ作り終えていなかった施設があったとして、それを中心市街地に設置する、それで果たして中心市街地は活性化するのか、ということも検討していただきたいところです。

 「もの不足時代」の特徴は、どういう目的で人が集まってもそこには必ず「ものを手に入れたい人」なが混じっていました。変なたとえですが、人混みに石を投げれば買い物したい人にあたったわけですね。こういう時代には、人さえ集めればものが売れました。好立地=人がたくさん集まるところ、通るところ、というのはこの当時の常識です。
 「もの余り時代」はその逆。どこの家庭にもものが有り余っており、次に買うのは補充かあるいはよほど欲しいものがある時、気に入ったものが見つかったとき、ということです。したがって、いくらショッピング以外の目的で人がたくさん集まっても、それが物販業にとって宝の山というわけにはいきません。これがこれまでの常識と「もの余り時代」の大きく違うところです。

 したがって、中心商店街活性化の牽引車、核として非物販の集客施設の設置を計画するのは前述したように二重の意味で慎重になるべきです。
 第一に、疲弊している中心市街地の集客核という大義名分から施設自体の採算性の検討が甘くなり、やがてはお荷物になる可能性が否定できない。
 第二に、非物販の施設への来訪客は商店街の買い物客とは来街目的が異なるから商店街は素通りされる可能性が高い。商店街ひいては中心市街地活性化への波及効果は乏しいと言わざるを得ない。
 もちろんこれは一般論であり、都市によっては非物販の集客施設の設置が必要なところもあるでしょうし、一部ではその開設が中心市街地全体の活性化に好影響を及ぼす例もあることでしょう。ただし、それはあくまでも例外的な要因を持ったケースであることが多い、とても中心市街地一般で安易に成り立つ話では無いと思います。

 新設される施設は、中心市街地の核、集客力向上の切り札という位置づけではなく、それを二次的な効果として期待しながらも、まずは自前の来訪目的をきちんと確立した、独立採算がしっかり見込まれるものであり、かつ、施設自体の機能から考えて中心市街地に設置することが妥当なものであること。
 前述のように商店街への回遊を大きな目的として設置する、という程度ならやめた方がいい。誤解を恐れずにいえば、この時期、箱ものを作れば商店街がどうにかなる、ということはまず有り得ない。これは作った後からでは遅すぎる、Web検索で全国的に成功事例をチェックしてみてからでも遅くはありません。

 もちろん成功事例=竣工事例ではなく設置した目的に照らして成功している事例、施設自体が成功しかつ当初の目的である中心市街地全体の活性化を牽引する機能を果たしている事例、ということになります。



集客力と購買促進力

 購買促進、聞き慣れないコトバですが私の造語です。販売促進がお店側が売りたい商品をお客に買わせる手練手管であるのに対してこちらはお客の生活つニーズに対応する店づくりをアピールすることで購買意欲を喚起する、という基本的な考え方を意味しています。

 さて、中心市街地活性化の施策の一環として非物販の集客施設の整備が計画される場合、その背後には「人が集まればものが売れる」という、大昔、もの不足時代の経験則が潜んでいませんか? 中には、もの離れ時代だからものでは集客できない、だからもの以外の要因で集客して、集めた人たちにものを売ろうという非論理的な主張があったりします。こういう主張をする人は、何を言っているのか自分でもよく分かっていないのではないか。

 非物販施設を目的に来街した人に購買を期待する時、その購買はいわゆる「消防購買」ということになります。衝動購買には、3つの種類がありますが、いずれにせよ、来街するまでは買うつもりの無かった商品を、見たとたん、購買意欲が喚起され思わず勝ってしまう、という購買行動です。
 このような購買が起こるには、@来街者が街を回遊する Aウインドショッピングする B欲しくてたまらない商品が目に留まる C店内に入って買い上げる、という段階を踏むことになります。4つの段階のうち一つでも成立しなければ衝動購買は有り得ないわけです。

 非物販施設は、自らの機能・企画で来館をアピールします。中心市街地という集客条件が相対的に悪い立地への集客ですから、強い訴求効果のある企画が必要です。このアピールを見て来街する人は、この施設への来館・企画へお参加を目的にしています。
 来館にあたっての行動スケジュールに「商店街に行ってウインドショッピングを楽しむ」という予定を入れる人はほとんどいないでしょう。来館目的を達成したお客はさっさと次のデスティネーションに向けて移動します。商店街のお店には目もくれません。だって来街目的はショッピングではなかったのですから

 ということで、中心商店街の集客強化のため、という目的で整備される非物販施設はその目的を達成することが出来ません。まして商店街の「核」になどなりうるものではありません。核とは「その商業集積が提供しているショッッピング機能を象徴している店舗」であり、核の集客力とは単なる集客力ではなく、購買意欲を集客する・購買促進力のことです。非物販施設ではいくら大きくてもこのような機能を果たすことは出来ません。

もう一つ老婆心ながら注意を促しておけば、以上のような論理が分からないまま集客核として計画される非物販集客施設は、商店街との相乗効果、互いの集めたお客のやりとりなどをあてにしているとその着想の安易さから、施設自体の集客力も乏しくなり採算性が危ぶまれます。

 非物販施設が商店街活性化に大きな役割を果たすことを来たするのは間違っています。それでも作りたい人は、移設自体のデスティネーション(来訪目的)の確立、採算可能性の確保をシビアに検討してからにすべきです。



物販施設の開設

 中心市街地における商業等の活性化の一環として、大型物販施設の開設=撤退した大型店舗の空き店舗の活用や再開発事業等による新規開設、さらに通りに散在する空き店舗の活用などが挙げられています。

これは相当慎重に取り組むことが必要です。

1.百貨店、量販百貨店などが廃業撤退した店舗の活用
多くの場合、中心商店街の「核店舗」の再生という趣旨で企画されているものです。このような企画は、ショッピングモールとは何か、商業集積における「核」とは何か、ショッピングモールにおける核店舗とはどのような業種・業態が適切か、などの基本的な知識を欠いたまま作られているものが多いと思われます。

 これは、前件は何故立ちゆかなくなったのか、という反省・批判的検討が無いまま、家賃など一部経費を軽減することで再スタートさせようとするものだと思います。
 もちろん、前件は家賃が高いために廃業に追い込まれたわけではありません。その多くは顧客離れ、郊外型ショッピングセンターとの競合に敗退した結果の廃業ですから、これをふまえれば新しい施設は郊外型ショッピングセンターと中心市街地の関係を明確に理解した上で中心市街地が目指す商業集積としての機能を強化する方向で決定されるべきです。
 このことを不問にして、郊外型ショッピングセンターの核である量販百貨店などを単独誘致していくる、などという企画では失敗することが目に見えています。

 商業活性化に取り組んでいくにはこのような理屈っぽいことを積み重ねなければいかないか、ということについては別途詳しく論じますが、一言でいえば、お客が生活に習熟し、商品、お店を評価する眼が厳しくなっている、という事実に対応するためです。


2.空き店舗の活用

 次に商店街に急激に増えている空き店舗の活用ということについて。
確かに空き店舗が並んでいるよりも、営業中のお店が軒を連ねている方が活気があるし、場合によっては回遊と言うことも発生するでしょう。

 しかし、考えなければいけないことが二つあります。
 第一に、誘致するお店は「欠業種店」ではなく、ショッピングモールのテナントとしてふさわしい性格のお店、です。そうでないと出店者も将来にわたって商店街立地を活かすことができないでしょうし、街全体としても相乗的にまちの魅力が向上するということになりません。
 問題はそのようなお店が現状の商店街に出店してくるかどうかと言うことです。

 第二に、空き店舗対策に努力している間も商店街の集積としての機能の劣化は着実に進むわけで、いつ何時新しく撤退・廃業するお店が出てこないとも限りません。現在取り組まれている空き店舗対策は、「これ以上空き店舗を増やさない」対策には成り得ていないはずです。
 いつかどこかで申しあげたように、空き店舗のオープニングセレモニーとお隣の閉店セールが同時期に開催されても少しも不思議ではない、という奇妙な状況が現在の空き店舗対策の実態でしょう。

 中心市街地に新しい商業施設を作ろうとするなら、「ショッピングモール(あるいはその他の「一体的推進の目標」)」の核あるいはテナントとしての適性を持ったものを計画すべきです。
 もし、基本計画に事業全体を駆使して実現する商業集積としての目的像が明確に成っていないとすれば、施設整備に先立って目標を確立しないといけません。

 皆さんの基本計画では多分、中心市街地に再建する商業機能のあるべき姿は、ショッピングモールとしては描き出されていないと思います。全体として実現を目指す集積像が決まっていない段階で中心市街地内に新しい商業施設を計画する、空き店舗の活用を目指すという事業に単発的に取り組むのは危険であり、失敗したときの対処についてきっちり覚悟が出来ていなければ、ひとまず延期した方がよいと思います。
 乗りかかった船、構想作りなどに経費を使っているから、等々の理由で、推し進めると取り返しのつかないことになります。これは本当に気をつけてください。

 中心市街地の物販施設の整備は、中心市街地に新しく作りあげていく商業集積の性格を決めた後で取り組む、という姿勢が必要です。



物販機能再構築の順序

 ショッピングモールを目指す、という方針のもとでコンセプトを導きとして物販機能を充実させていくことが必要です。
 このとき、何よりも真っ先に取り組まなければならないのが、既存個店の活性化です。まずはこれ以上空き店舗を増やさないということと、中心商店街の物販立地としての可能性を実証すること、この二つは中心市街地活性化という事業の成否を左右する重要な取り組みです。

 この二つのことを実証するには既存個店が基本計画の方向でショッピングモールのテナントという性格をもつお店へと変わっていく、その変化がお客から支持され、繁盛する個店が生まれてくる、後に続く店舗が増える・・・、という取り組みが必要です。この仕事を抜きにして「核」や「非物販施設」を整備しても、モール実現の動きを促進することは出来ません。

 まずは、基本計画に賛同し、基本計画に示された方向で「個店の転換」に取り組む有志商業者が現れる、グループを作って実験的に転換に取り組んでいく、という第一段階を組織しなければならない。
 皆さんの商店街がこのような活性化の方向や「個店の転換」について聞くのは始めてのことですから、最初にしなければならないことは理論武装の機会を作ることです。これを省略して先に行く、ということは絶対に不可能です。まずみっちり勉強しながら平行して店づくりの転換に取り組む、という段階を計画することが必要です。



基本計画と実験的取り組み

 モールへの転換は商業者有志の実験的な取り組みからスタートするわけですが、関係者は次のことは片時も忘れないようにしてください。

 モールへの転換、前述のように商業者有志の実験的な「個店の転換」への挑戦から始まる、軽く言っていまけかども、これは当事者にとっては文字通り自分の事業家としての命運を賭けた勝負です。これまでの悪戦で体力を消耗してきたうえでの取り組みですから、いくら試行錯誤といってもそう何度もやり直すことは出来ません。なるべくやり直し無しで順調に転換し、新しい繁盛を作りあげてもらいたいですね。

 そのためには転換の方向・方法について迷いがあってはいけません。「基本計画」が示す情勢分析、転換の方向、順序、個店の課題等々が完全に納得され、自分の進むべき道としてしっかり選択される、ということがないと一切が始まりません。
 さらに前人未踏の取り組みですから支援体制もしっかり整備することが必要です。活性化補助金などもエコ・ステーションなど何を目的にしているのかよく分からない例のように細部にわたって用途を限定せず、個別具体の商店街の取り組みの段階に応じて柔軟に活用できるように、地元に全部企画させるくらいの配慮は当然のことでしょう。
 さらに、実験的に「個店の転換」に挑戦する試みについては長期低利で運転資金を確保する道を造ることも必要になります。

 皆さんの基本計画、商業者に対して「これでもうひと勝負してみよう」とアピールできる内容になっているのか、リーダーが組織を引っ張っていく上での、導きであり杖でもある、と確信できる内容になっているでしょうか?

 繰り返しますが「ショッピングモールに見たてた整備」というのは、商業者に対して基本計画に自分の事業の命運を賭けさせるわけです。中心市街地活性化に関わる商業者以外の人たちはこのことを片時も忘れ内容にしてください。計画を提示するということは「この計画に貴方の事業を賭けなさい」といっているに等しいのですから。

 計画内容の妥当性はもちろんのこと、行政を始め関係各方面の支援のありかた、とりわけTMOの充実などにはあらためて再検討が必要ではないでしょうか。




組織

 中心市街活性化を推進するための組織の計画。

1.TMOについて
 「平成商人塾」の講義で示していますが、中心市街地活性化におけるTMOの位置づけについて、国はハッキリ「ショッピングモールと見立てた整備・運営」であるとしています。基本計画の策定が始まったころにはこれほど具体的な内容は示されていませんでした。
 中心市街地活性化は中心商店街の活性化、その方向はショッピングモールへの転換である、と提唱している私にとっては当たり前のことですが、皆さんの基本計画にとっては果たして如何でしょうか。

 ショッピングモールを構想し、地元の商業者の努力を中心にその実現を推進していく、というのがTMOの役割です。このことを本当に理解して設置されているTMOが全国にいくつ有るのか・・・。

 三セクであれ、会議所TMOであれ、TMOの役割に変わりはありません。企画調整型と言われるTMOの場合、ショッピングモール全体の企画は誰がやるのか、とりわけTMO事業にはあげられていないが、その前提となるショッピングモールの商業機能の整備・運営という優れてソフトな部分の仕事を如何にこなしていくのか、ということです。

 TMOの問題は帰する所、タウンマネージャーの問題になります。ショッピングモールを経営するTMOを統括し全体の事業に責任を持つ職能ですが、これは郊外型SCでいえば、デベロッパーとゼネコンとキーテナントのそれぞれのプロジェクト責任者と店長を牽引するようなとてつもないスーパーマンです。
 この人材あるいはチームをどのように手配しようとしているか、このあたりになるともうほとんどの都市がお手上げ状態でしょう。しかし、この職能を確保しないとモールの実現は不可能です。

2.商店街の推進組織
 これは、各地の事情がありますから一概にはいえません(ということにしておきましょう)。ただし、「ショッピングモールと見たてた整備・運用」には、当然ながら立地する各個店のモールにふさわしい業容への転換という作業を伴います。
 これは商業者にとって「基本計画」に自分の事業の命運を賭けることですから、おいそれと合意形成、明日から組織ぐるみで、というわけにはいきません。
 どうしても趣旨を理解し、計画に魅力を感じる一部意欲のあるグループの実験的・先導的な取り組みが必要です。
これを同組織するか?

3.商人塾の創設
 名称は何でもいいのですが、商業者を始め関係者が「基本計画」に基づいて「ショッピングモールに見たてた整備・運用」を実現していくために不可欠である知識・技術の修得、態度の変容を如何に実現していくか、そのためのシステムを作ることが必要です。
 これもほとんどの基本計画で十分取り上げられていないところではないでしょうか。行政、会議所、TMO、商店街、事業実施に向けて必要な知識・技術・情報を完備しているところは無いはずですが、どのように装備していくつもりなのか・・・・。



課 題

組織について計画する際の前提となる確認

 商店街振興施策は、昭和40年代の百貨店・量販百貨店(以下「大型店」)の出店への対策から出発していることはご承知のとおりです。
 中小規模の商店が連袂する商店街が隣接地に出店して来た大型店と伍して事業機会を確保していくために、共同化により「規模と施設・環境」を整備することが追求されました。スケールメリットの実現です。

 大型店の競争力は「規模」であると認識され、これと対抗するためには当方も「規模」を実現しなければならないということで、組織化が推進され、高度化事業をはじめとする組合事業が計画され、取り組まれたわけですね。
 以来、今日まで商店街活性化=大型店対策=組織規模と施設・環境整備という考え方は少しも変わっていないようです。

 連袂する店舗を組織化して「共同販促事業」、「環境整備事業」などに取り組むことで、大型店の魅力に対抗する、ということが商店街活性化施策の基本となっています。ここには問題が二つあります。

 第一に、大型店の魅力は「規模と施設」とする見方は余りにも皮相的であり、当時の大型店の魅力、買い物の場としての魅力とは、品揃えの魅力であり、提供方法の魅力であり、提供する情報の魅力でした。
 「規模と施設」はそれらの魅力を実現するための条件であり、お客が求めていたのは容器ではなく、ナカミでした。

 第二に、消費者にアピールする魅力を充実させる=買い物満足を実現するためには、「規模と施設」ではなく、そこで働く人間の「能力」が大切です。
 彼らの働きこそが「魅力=満足」を創り出すのですから。人的な能力から見る大型店は、発足当初こそ中小商店と大差ないものでしたが、すぐに教育訓練を重視するようになり、社員教育に多額の投資を払うようになりました。
 教育訓練をビジネスとするコンサルタント会社がいくつも生まれ、大型店を展開する企業は、競ってこれらが開催するセミナーに社員を派遣し、また体系的な社内教育システムも作られました。

 商店街が規模と施設で対抗しようと考えていたころ、大型店は規模と施設を活用して顧客に魅力をアピールするために不可欠の教育訓練に取り組んでいたわけです。

 この結果、大型店と商店街との間には人的能力という面で大きな格差が生じました。商店街関係者は、大型店に規模と施設で負けている、勝つためには規模と施設の充実が課題だ、と考えていましたが実際は組織規模や施設の大小よりもそれらを運用して顧客満足を実現する人的能力を向上させることが先決だったわけです。

このような問題と解決策のミスマッチは、そのこと自体が大きな問題を生みだしているわけですが今日まで問題として認識されていません。商業施設の勝負どころは「買い上げた商品を持ち帰って使用したときの満足」であり、これに取り組んでいくには、「もの不足時代の商売の常識」に浸りきっている店主以下関係者の能力の転換が必要だということです。
このことはほとんど気付かれていないか、気付いていてもそう店外活性化を推進する上での課題というレベルの問題ではない、と認識されている。

 認識が変わらない以上行動は変わりません。商店街で「教育訓練」が戦略的な課題として取り上げられることはまったくありませんでした。
 「規模と施設環境」、商店街活性化施策はこの二つを基本課題として展開されてきました。これは今日に至ってもまったく変わっておりません。

 つまり、中心市街地ー中心商店街活性化の取り組みを推進する関係者は、昭和40年、商店街活性化ということが課題になって以来、今日までほとんど変わらない問題意識、能力のままで事業に取り組もうとしてい留ということになります。

 このような問題意識、思考の枠組みを持った皆さんが作る基本計画は、もちろん自分たちの問題意識に即した内容になることは言うまでもありません。したがって、計画には「推進関係者の能力の転換」や「商店街関係者に対する教育訓練」などという事業はまったく挙げられていない。例外的に言及されている場合でも項目だけ、具体的な施策はまったく計画されていません。

 これは国も同様であり、「基本方針」などには商店街立地の中小商店の人的能力の向上が必要だということには触れられていません。以下推して知るべし、多くの都市の問題意識ももあなたがたのところと似たり寄ったりです。

 活性化を担う各級組織、まずは組織関係者の能力の転換を実現することがさしあたって取り組まなければならない最初の課題であるということは、当サイト常連の皆さんにはもはや常識だと思います。

 この一点を取ってみても「基本計画」の見直しは必要だとお思いますが如何ですか?

 ちなみに、かって大型店が取り組んできた従業員教育の内容は、現在の顧客のニーズに対応できなくなっていることは、このサイトの随所で指摘している通りです。




まとめ

如何でしたか。

 中心市街地活性化について理解する・計画する・取り組むにあたっての関係者の思考の朔組みそのものがまずは改善しなければならない大きな障害となっていることが了解されたことと思います。

 もちろん、これは一般論でありほとんどの都市に共通するレベルでの問題点です。個別の計画の場合はさらに様々な問題があると思います。
 いずれにせよ、自分たちのこれまでの中心市街地〜商店街活性化へのアプローチのありかた、その基盤である能力の転換という問題意識を持たない計画では活性化を実現していく展望を持ち合わせていないといって過言ではないでしょう。TMO以下の取り組みは壮大な時間の無駄となります。

 このような実態を確認した上でどのように取り組んでいくべきか、これについては、Web商人塾で「基本方針」についての講義であらためて考えることにします。(「ショッピングモール論」が終わり次第始めます)

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