トップページへ ホーム資料庫商店街活性化フォーラム保存版 2001年-2002年目次



S017■最大の課題・個店の転換

2002/04/25(Thu)

 「中心市街地活性化法」施行以来、各都市でそれぞれのスタンスで中心市街地活性化への取り組みが行われています。

 最近顕著になっているのは、中心市街地=中心商店街の活性化の最大の課題が「個店の活性化」であることが誰の目にも明らかになって来たことです。 ご承知のとおり、法以前の商店街活性化のスキームでは既存の個店の活性化は課題ではなく、事業の目的だったといって過言ではありません。
 過去の活性化施策のほとんどは、来街者を増やすための事業でしたが、これは個店サイドから見れば「店前通行量が増える」ということです。
 「店前通行量が減少している」=業績が低迷しているということから「店前通行量を増やす=商売は繁盛する、個店の活性化は店前通行量を増やす施策を講じることで実現できるという転倒した認識のもと、環境整備や公的施設整備などの施策に取り組んできました。

 しかし、かって店前通行量が多かったのは買い物客が多かったからであり、いま通行量が少ないのは買い物客が減少しているからです。
 その証拠に買い物以外の要因によって依然と変わらず通行量が多い商店街で業績が低迷しているところはいくつもあります。そういう街では通行客=来街買い物客ではありません。

 中心商店街の多くは、純粋に買い物のために行く場所ですから、買い物の目的になるお店が無い商店街は、他にどのような施設が併設されていても買い物行き先としては選択されません。新しい要因で来街者が増えてもその人達が買い物客になるというのは期待できません。

 法以前の活性化施策が効果を発揮できなかったのは、それらがが活性化=店前通行量の増大という認識のもとに展開されたからです。言われているように施策の範囲が点や面に限られていた、ということに主因があるとは考えられません。
 このあたりは、新しい法のスキームのもとで施策を展開するにあたって十分考えておかなければいけないところです。

 「中心市街地活性化法」のスキームは、街を一個のショッピングモールと見なして基盤整備および活性化に取り組むということであり、これは商業集積としての充実を実現するということを意味しています。

 街をショッピングモールと見なしてその機能を整備するということの中心的な課題は、テナントミックスの充実と言うことです。
 テナントミックスの充実とは、商店街に空き店舗を利用して欠業種店を誘致する、というようなお手軽処方ではありません。街を一個のショッピングモールと見なすということは、明確なコンセプト(=地域住民から見た買い物来街目的・地域で分担する商業機能)を定め、立地する店舗全体でそれを具現していく、ということを意味します。つまり既存個店は街が実現を目指す新しいショッピングモールとしてのコンセプトを分担するテナントへと変身することが必要です。

 このあたり、「法」関連の資料にはほとんど展開されていませんから、文面だけをたどると文字通りこれまで成果の挙がらなかった点や線の施策を面に広げるだけ、ということになってしまいます。
 面といえども点や線の集合であり、個々の施策のほとんどは点や線を対象に実施されます。これらの施策が面の活性化に効果を上げるためには、全体を一個のモールと見なす、という目的の元に全ての施策が整合性をもって組み立てられることが必要です。

 ここから既存個店のモールテナントへの転身という課題が浮かび上がってきます。
 多くの商店街で空き店舗が増えています。空き店舗率2〜3割というところはざらでしょう。逆から考えれば、現在営業中の店舗が7〜8割存在する、ということですから、これら既存個店の業容を現状のままで空き店舗を利用してショッピングモールを実現する、ということは不可能です。
 また、条件が揃ってモールの核にふさわしい大型商業施設を開設しても既存個店はその集客力を利用することは出来ません。核が実現している買い物目的と既存個店群の業容との間に大きなギャップがあるからです。

 ラグジュアリィニーズに対応する商業集積であるショッピングモールは商圏内の多様なラグジュアリィに対応する機能を備えておくことが求められ、それは大型集積を一個設置することで満たされることではありません。
 全部と言うのは望み難いにしても、街が変わった、とはっきり分かるくらいの規模で街ぐるみでのショッピングモールへの転換が実現する、その品揃え・情報提供・サービスなどの内容も適時適切に変わっていく、ということが実現して初めて地域社会に不可欠の商業集積として認知されるわけです。

 ショッピングモールへの転換を目指す、ということはそのまま既存個店の転換、モールのコンセプトを分担する「テナント」へと転換する、ということを意味します。このあたりもこれまで幾度となく説明してきたところですが。

 以上を要約すると、中心商店街が活性化の実現を目指してその方向を「ショッピングモールへの転換」に定めれば、既存個店の転換を実現する、ということはもっとも重要な課題である、ということです。
 また、個店の現状は、核を誘致してその後からついていくとか、合意が形成されたら取り組むなどという悠長なことが許される情況ではありません。直ちに活性化への取り組みを始める、取り組みが続くにつれて業績が確実に上昇する、という方向でお店のありかたを抜本的に転換することが必要なお店がほとんどのはずです。
 このように、中心市街地活性化という全体の課題から見ても、個々の店舗の営業状態から見ても「個店の転換」は最も重要かつ緊急の課題です。

TMOの課題

 このことは、街を一個のショッピングモールと見なしてその整備運営に当たる、TMOが果たすべき役割を規定することになります。

 TMOは、タウンマネジメント機関であり、その認定は「中小小売商業高度化事業構想」の提出によると定義されています。
このことから実務では認定要件である「TMO構想」策定の方が重視され、タウンマネジメント機能及びその目的については余り注目されないままTMOが結成されてきました。
 TMO構想の作成と事業実施にあたっての調整ということがメインの事業であれば、ことさらタウンマネジメント機関を新設するまでもなく、商工会議所が高度化事業関係の専門家の支援を得ながら、事業主体である組合等の取り組みを支援する、というスキームでOKでしょう。事実、先行しているTMOはこのようなスキームを前提にしているものが圧倒的です。
 企画調整型TMOといわれる会議所TMOはその典型ですね。

 最近になってTMOの基本的な役割は、TMO事業の企画調整ではなくて、街全体のショッピングモールへの転換を企画し推進する、というタウンマネジメントそのものであることが理解されてきました。これには先行TMOが取り組んだTMO事業の結果がこれまでの高度化事業と同様に街全体の活性化を直接もたらすものではない、ということが再確認されたことも作用しているのでしょう。

 TMOを担う商工会議所は地域商工業の発達改善を組織目的としており、その中心的な課題は従来から商業の活性化にあります。この組織目的に照らしても中心商店街の個店の活性化は商工会議所の長年未解決の課題です。
 商工会議所はTMOを担うことで、組織目的としての「個店(会員)の活性化」という課題にあらためて向き合うことになりました。

 商工会議所TMOについてしばらく考えてみたいと思います。

 商工会議所TMOは「企画調整型TMO」とされていますが、その位置づけは、TMO構想に記載されている(=企画されている)事業の推進について関係各方面の調整を行う、というところにあります。

 TMO=タウンマネジメント機関=ショッピングモールへの転換の推進機関という新しい(本質的な)役割から商工会議所tmoを考えてみましょう。

 タウンマネジメントに当たるTMOが「調整型」で事業が滞りなく進展する、というためには、調整の対象になる商店街等の各組織がそれぞれ「モールの機能を分担する街の役割」を認識しかつ、それを具現化していく能力を持っている、ということ前提になります。「個店の転換」についても同様です。

 簡単にいえば「企画調整型TMO」で活性化が推進できるのは、中心市街地活性化の取り組みの主体であり同時に対象でもある商店街組織及びその構成員である各個店が活性化に向けて自立的な取り組みが可能である、という条件が整っている場合だけです。

 このような条件が整っている都市は全国にただの一カ所もありませんから、企画調整型TMO=会議所TMOは、三セクTMO以上の重荷を背負ってしまっていることになります。

会議所TMOの課題

 まず三セクTMOについて考えてみます。

 三セクTMOの立ち上げは大変困難な仕事です。
 各商店街組織が三セクに参加する、ということは中心商店街活性化の主体として自分たちが立ち上がる、ということを意味します。
 (なかには山三セクTMOも調整型以上にお手軽発進・失敗という事例があるようですが、ここでは触れません)
 つまり、「中心市街地の活性化=立地する商業集積のショッピングモールへの転換」という都市全体の課題について、当事者である自分たちが主体として担っていく、ということですね。
 これは商店街の皆さんが自然発生的に到達出来る境地ではなく、例えば当社の提唱する理論のような一定の知識・可能性の認識があって初めて実現できるところだと思います。
 基本計画を受けて展開される「合意形成事業」はこのような転換の主体となるための理論武装及びそれを踏まえた新しい事業主体への結集=三セクTMOの結成、という課題を実現するために取り組まれるべき事業です。

 活性化を担うべき商店街の個店・組織の現状は、間違いなく上述のような強力な推進組織を必要としており、かつ、その組織が自分たち自身も参画して作っている組織だ、というありかたは「モールへの転換」、「個店の転換」には不可欠の組織であることが理解されると思います。

 以上のことが理解されると、TMOは商業者主体(出資の多寡ではない)で新設される三セクであることが望ましいことが理解されると思います。

 しかし、TMO=商業者を中核とする三セク組織というあるべき組織はこれまで実務ではなかなか理解されませんでした。
 「個店の転換」という商業者自身が自発的に取り組まなければ成就しない仕事が活性化事業のメインであること、これを推進するためには商業者自身の意欲・知識・行動の転換が必要であり、事業のスキームはこれを実現出来るものでなければならない、ということが理解されていなかったからです。

さて、業態を問わず三セク経営の失敗が報じられることが多いことから、三セク=うまくいかない経営、失敗するという通念が広がっており、さらにTMO関係で破綻するところまで出てきましたので、このような現象面から三セクを忌避する風潮があり、このことが会議所TMOという形態を選択する要因となっていることは否めません。

 さらに、三セク立ち上げとなると関係商店街組織全体の合意・出資という負担をともなう合意を作らなければならない、現下の情況で(まして活性化の展望の示せないなかで)合意を形成することはきわめて難しい、他方高度化事業着手の時期は迫っている、ということから会議所TMOが良い、という選択になったところもあったでしょう。

 合意形成も「TMOを立ち上げないと国の補助受けられない、事業は各商店街が企画・実施する、TMOは調整・窓口機能だけ」「申請業務は国の専門家派遣を利用する」ということで誰も何の負担もない結構なスキームが出来そうでした。

 このような経緯から会議所TMO・企画調整型TMOが発足しているわけですが、これははっきり商工会議所には似つかわしくない役割です。

 企画調整型とははっきり言ってしまえば高度化事業の窓口ということです。これは極端にいえば事業団からタウンマネジャーを派遣していもらって各街区、個別事業ごとの計画を作成する。会議所はそれらをホッジキスでまとめて提出するだけ、ということであり、特段会議所でなくとも出来る仕事です。
 高度化事業窓口業務を会議所が受け持ち、事業が成功しても会議所本来の任務である商工業の改善発達・会員事業所の敬愛改善指導ということとはつながりません。また、商店街の活性化も実現しないことはこのサイトでは常識です。モールへの転換という上位事業と連動していないTMO事業は達成されても目標には近づかない、というのが特性ですね。

 中心市街地活性化、とりわけそこに立地する個店の指導については従来通りあるいは従来にもまして注力しなければならない。
 これは会議所にとってTMOを受託するか否かに関わらず遂行しなければならない任務ですが、もちろんこのためには相当の「能力の転換」が必要です。TMOの事務業務などを担当して活性化業務と考えていては、本来の業務がおろそかになる可能性が高い。

 現在会議所が直面しているのはこれまでの指導ノウハウが業種を問わずほとんど無力化しており、指導能力を転換・向上しなければならないと言うことです。TOM論議とは別の時限で能力を向上・転換はきわめて重要な課題になっています。
 商業者自体に主体的に活性化に取り組む意欲がない、当方にはそのような商業者の現状からスタートしてモール化を強力に推進するために必要な指導能力が不足している、という情況でTMO本来の業務であるモールへの転換を抜きにしたままでTMO事業の推進役に商工会議所があたるのというのは事業は成功したが街はさらに衰退した、という結果をもたらす可能性が高いと予測せざるを得ないと思います。

 会議所がTMOを担うとするならば、それは企画調整型などでは有り得ない。本来の任務である個店に対する経営指導などを考え合わせれば、企画調整といいながら、その実、中心市街地活性化に関する一切の事業を制追い込むことになるのではないか、と考えられます。

 関係各方面はTMOに期待する、TMO企画調整機関だ、といいながら会議所本来の業務からして個店の転換まで一切の指導を受け持たなければならなくなる。企画調整型ではなく、本来のあるべきTMOを会議所が担うことになりますが、果たして本格的なTMO業務が成り行きで作られた会議所TMOに勤まるか?

 関係者は虚心に検討してみるべきでしょう。
もちろん、安易に作られた三セクTMOの場合、自体はさらに深刻ですね。

 商店街組織、商店主の皆さんに「モ−ルへの転換」、「個店の転換」について何の決意も迫らないまま出来てしまった会議所TMOですが、このままでは個店の転換を主要課題とする活性化を実現する条件が余りにも欠けています。

 その通り、だから活性化なんか出来るわけがない、と考えるようではこのサイトに来ていただく意味がありません。無い無いづくしでのスタートから一挙に全てを事業成就へのプラス要因に転じてしまう、というのが「戦略立案」ということです。

 商店街組織の力量、商店主の意欲、会議所TMO・行政の能力、その他中心市街地活性化を実現するために必要な関係者の条件が全て現状ありのまま、というところからスタートして活性化を推進していく体制を如何に作りあげていくか、ということが会議所TMOの戦略課題であることを確認してください。