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 『コンサルタントの眼』                     No.57 2003/12/22 (Mon)

      # コンセプチュアライザーtakeoが様々な事象を批評 #
   
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              ◆ トヨタの快進撃 ◆ 
        
        
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■トヨタの快進撃 

 根拠としては、トヨタ方式とかいう生産プロセス管理−効率化が挙げられているようで
すが、私は全然違うと思いますね。

 生産性アップ=コスト削減の効果=原価低減ですが、それが即・利益を生み出すわけで
はありません。
 通常は、販売価格の引き下げ〜競争力アップに結びつくことでシェア拡大〜利益確保と
いう戦略が一般的でしょう。これは、同業他社と同質微差の商品を市場に出している多く
の企業が何の疑いも持たずに選択しているところです。

 トヨタの場合、コスト低減を価格に反映させる必要がない、というところが快進撃の秘
密。顧客を満足させているのは生産効率ではなく、販売効率でもなく、顧客自身がトヨタ
車を購入し・乗り回している間の評価です。
 顧客の評価は、生産効率から生み出されるわけではありません。

 マス・カスタマイゼーションが当たり前になりつつある時代、それを可能にするのは生
産プロセスの効率化ですが、業績確保にはそれだけでは絶対に不十分。
 車購入客の期待はラグジュアリィ充足にあり、それを約束するのは生産段階ではなく企
画段階、トヨタの快進撃の原動力は生産効率を活かせる「企画力」にあるのです。

 メーカーの特性は、計画部門の少数の才能が組織を動かし、成果を左右する、というと
ころにあります。
 優秀な人材の育成とその活用方法がトヨタ快進撃の「秘密」でしょう。

 業種や規模を限らず、トヨタの快進撃の「秘密」に学ぶことは多いでしょうね。


■トヨタはものなど作っていない 

 トヨタが提供しているのは、「空間を移動するための空間におけるラグジュアリィ」で
あり、「もの」なんか全然全く提供していませんね。
 「ものづくり技術&システム」が役に立つのは、このラグジュリィ空間の提供に貢献す
る、および貢献を通じて利益を確保する」というところにあります。

 トヨタに学ぶ、というのが流行のようですが本当に学びたかったら、「ものづくり」以
外のレベルでもしっかり学びましょう。


■効率は効用を代替出来ない 

 顧客にとって大事なこと(購買デスティネーション)は、商品が自分の生活にどう貢献
してくれるか、ということ。つまり効用それも顧客個人の期待に対する効用です。

 お客にとって、商品がどんなに効率的な生産工程で作られたか、ということはまったく
関係ありません。顧客満足は期待して買った商品が期待した通りないしはそれ以上の生活
堪能に貢献した、ということの結果としてもたらされるものであり、商品がどのような生
産ラインで作られたか、同業他社に比較した時、どんなに優れた生産体制を作りあげてい
るか、ということなど全然問題になりませんね。

 トヨタの車が一番売れているということは、それが「トヨタ式生産方式?」で作られた
からではなく、その仕様が標的顧客の期待に対応している、ということです。
 こうして素直に考えてみると、トヨタの強さは工場にではなく企画室にある、というこ
とになります。
 トヨタの将来を占うには、企画系のマンパワーの確保についての仕組みを見るべきで、
工場を見てもな〜んにも見えないと思いますね。

 これはもちろんトヨタに限らず、メーカーレベルに限らず、マーケティング業全般に関
わる優先順位トップの課題です。


■アフォーダンス 

 以前にも話題にしましたが、認知心理学者のJ.J.ギブソンという人が提唱した概念
で、一言で言えば、「人間がその創造物に期待する貢献」のこと。
 たとえば椅子のアフォーダンスは、快適に腰掛けること。
 マーケティング関係ではあまり用いられていないアプローチですが、ラグジュアリィ、
ユニバーサルデザインなどと密接に関係しています。
http://www.quolaid.com/library/magbn/mg030530.htm

 この概念を踏まえれば、効用は期待への貢献度合いということになります。つまり、期
待無くして効用無し。期待、とりわけ現状において未満、不足状態に置かれている「ある
べき期待」を察知、提供することが出来るか否かは、日本企業にとって存在価値そのもの
であり、存続を左右するものです。

 製品開発レベル、私見ではアフォーダンスの構想〜設計には、C.アレキサンダーのパ
ターンランゲージ的なアプローチが有効です。
 この話はあらためまして。


■分業とブランド 

 生活必需品レベルから離陸した社会の課題は、堪能です。
 「自分らしい生活の堪能」とはいうものの、自分らしさ、を自ら構想・設計・演出する
のはなかなか難しいことです。
 誰もが誰かの役に立つことで自分の目標を達成する=分業社会においては、それぞれの
人が自分自身の持ち場について、「堪能」を構想・設計、提案することが求められていま
す。

 需要家は、「自分らしく」ということで漠然とした方向は考えていても具体的なアフォ
ーダンスを細部にわたって設計・製作する暇も能力もあるとは限りません。分業担当者か
ら「はい、あなたの欲しいのはこれでしょ」としかるべきアフォーダンスを提案されて初
めて、「うん、欲しいのはこれだった」と言うことになるのはけして稀ではありません。

 こうしてみるとブランドとは、ある特定のアフォーダンスの保証についての公言・アフ
ァーメイションだということがよく分かります。
 スーパーブランドが頻繁にデザイナーを交代させるのは、環境の変化に対応しながら、
顧客の求めるアフォーダンス(期待の内容は変転する)を提供し続けるためなのだという
ことがあらためて理解されます。

 トヨタの快進撃は、もちろん、提供するアフォーダンスの優秀性プラスブランド力でし
ょうが、ブランド力とは積み重ねられたアフォーダンスへの評価、現在〜将来に提供する
アフォーダンスの評価如何ではたちまち失寵するという事態もあり得ます。これは、製作
プロセスの合理化・効率化などとはまったく次元の異なる話です。

 このように考えれば、トヨタの将来展望は、効率の実現ではなく転変する期待に対する
貢献を持続させうるか否か、というところに着目しなければならないことが自明ですね。
そうそう、コンプライアンスとかも。

 一言で言えば、トヨタの将来は工場の中で決まるわけではない、ということですね。あ
たりまえのことですけど。

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◆次号:NO.58 12/26(fri)予定・・・
 遠方出張が続き、変則発刊になっておりますことをお詫び申し上げます。
  これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

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