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 『コンサルタントの眼』  No.48 2003/6/13 (Fri)

      # コンセプチュアライザーtakeoが様々な事象を批評 #
   
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        ◆ 省思考と自力思考  ◆
        
        
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 省思考とは、本来なら当然自分で考え・根拠づけて置かなければならないこ
とをどういう訳かさぼることを言う私の造語です。
 会議では自分の頭でしっかり考え理解している訳でもない「活性化」「ニー
ズの多様化」「構造改革」「デフレ」などなが空中を飛び交いますが、その意
味は、誰も明確には把握していない、したがって、会議の結果もそれが本当は
何を意味しているのか出席者の誰にも分かっていない、ということが有ります。

 意味や根拠の分からないことは、自分の頭で考えて解明する・少なくとも自
分的には決着を付けておく、この当たり前のことがどうして出来ないのか、今
日はその原因の一つを考えてみましょう。、

 かって、小売(流通)業界では、「人類4,000年に及ぶ商売の歴史の精髄は
米国で花開いている。商売とりわけ小売業はすべからく米国に学ぶべし」、と
主張する先生がいて、一世を風靡しました。いま?さぁどうでしょうか。

 先生は、とにかく、「商売の原理・原則は米国にある、自分で考えてはなら
ない、米国小売業に学べ、絶対服従せよ」、ということを盛んに主張していま
した。
「自分の頭で考えるな、アメリカで見てきたことを実行せよ」、の一点張り、
「自分の頭と商業4,000年の歴史のどちらを信頼するのか」というような論法
だったようです。今考えると本当に噴飯ないい草ですけどね。
 何しろ当時はなく子も黙る米国スーパーマーケットの全盛を眼前に見せつけ
れるわけですから、否応は無かったのかも知れません。「なるほど、4,000年
の歴史かぁ、なるほどなぁ」ということだったのでしょうか。
 では、米国では新しいビジネスはどこから生まれるんでしょうかね、先生?
と聞けば、全ては一瞬でガラガラと崩れ去る「権威」だったのですが。

 何しろ当時はアメリカで全盛期だったスーパーマーケット理論を直輸入、こ
れがブレイクしたため、こういう理論?が飛ぶ鳥を落とす勢いだったらしい。
米国で、顧客にとって見やすく買いやすい売場づくりの経験則が、日本では
4,000年の商業の歴史の精髄、小売業の原理・原則というふれこみであがめ
られたのです。とにかく、商業者の4,000年に及ぶ歴史に裏打ちされた原理・
原則ですから、「疑うな・信じて実行せよ」というわけです。

 考えるな、模倣せよ、なんでそうなっているのか、理由を考えるなどしゃら
くさい、そんな暇があったら一つでも多く原理原則を暗記せよ、というわけで
す。現在の流通大手とりわけ量販百貨店のトップクラスはこういう教育?を
たたき込まれていますからね。今頃になって「良いアイデアがあったら出せ」
などとはムシの良い話です。

 ところで先生ご推薦の米国の小売業ですが、当時絶頂を極めていたスー
パーマーケットはどうして米国で生まれたのか? 商業4,000年の精髄がど
うして歴史・経験浅い米国に生まれたのか? こういう疑問は当時の流通
関係者、先生にも生徒にも全く浮かばなかったらしいですね。技術について
も「どうしてそうしなければいけないか?」という疑問をもってはいけない、
それは商業4,000年の歴史を疑うことだ、というような論調ですね。

 もちろん先生自身、そういうように考えていた節がありますから、技術の説
明も抱腹絶倒というのはざらです。(これは「省思考」には付き物の悲喜劇の
パターンですが、いつかまとめて紹介しましょう。)

 米国では「お客の都合」にあわせて実現した工夫が先生にかかると「人類
4,000年の商業の歴史の精髄」となるわけですから、そこからはなんの進歩
もありません。卑近な例は「業態」という小売業の定義。詳しくは次号で説明
しますが、今となっては(とりわけクオールエイド社の理論を学んでいる人に
は)とうてい信じられないはちゃめちゃな説明でした。

 米国でスーパーマーケットが誕生した経緯はあまりにも有名ですから、皆
さん既にご承知のことですから割愛します。
 結論だけ言えば、既存小売業とお客の関係を、もっとお客に喜ばれる、支
持される商売の方法はないか?という問題意識をもって観察し、自分の頭で
考える人が問題を解決したビジネスモデルを発明する、というのが米国で新
しい小売業の類型が出現するパターンです。もちろん、その背景には優れた
(お客に支持される)ビジネスモデルを発明すればそれが商品になる、とい
うことがあります。

 人類の商売4,000年の歴史などということでは、新しい業態が次々に生ま
れる由縁を説明することが出来ませんからね。とにかく売場第一線の即戦力
育成という課題に対応するため、という側面もあったのでしょうがスーパー
マーケット理論の根拠を「商業4,000年の歴史」に求めたため、自分の頭を
使ってお客の立場で考える、ということを禁止しました。「ワーカー=人手」
を作るのには効率的だったかも知れませんが、組織風土は話になりません。

 そういう「人材育成」をやって来た企業がこの期に及んで「知恵を出し合っ
て難局を乗り切ろう」などと手のひらを返しても創業以来の風土はおいそれ
と変えることがはできません。全て、かけ声倒れ、という事態を幾度も目に
しましたね。

 小売業では、各部各層こぞって「お客のプラスを増やし・マイナスを減ら
す」という問題意識を持っていないと、もの余り・人あまり・店あまり・企
業あまり・という現状を突破していくことは不可能です。
 特にラグジュアリィへとシフトしつつある時代、お客と直接接する第一線
の人たちの能力をどう活用するか、ということが大きな課題です。

 販売第一線の人材育成・活用、これは流通のみならず、日本経済再生の鍵
を握っているといって過言ではありません。ラグジュアリィ対応はでもしか
販売員では無理、もちろん、商業4,000年の歴史を背負った「ワーカー」な
どの手に負える仕事ではありません。小売業にとって販売職が高度な識見・
技術を要する専門職となる日がすぐそこまで来ています。

 この時期、「水道哲学」時代の原理原則は全て一度疑うことが必要です。
もはや省思考で自動的に反応する、ということで解決できる問題はないと考
えるべき、あらためて自分の頭を信頼し自力思考の構造を再構築することが
必要です。
 とりわけ、「商業4,000歴史」説及びそれに基づく「原理原則」に呪縛され
ている流通関係者は絶滅したわけではありません。経営・店づくりのそこ
ここに生存、場合によってはいまだに猛威を振るっている可能性があります。

 自力思考と省思考、あなたの持ち場でも対決が必要かも知れません。

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◆次号:NO.49 03年6月20日(Fri)
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