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 『コンサルタントの眼』                     No.29 2002/2/9 (Sat)
   
      # コンセプチュアライザーtakeoが様々な事象を批評 #
   
      
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 ◆ 脱・資本主義の企業経営 ◆

             企業は資本主義を越える         

 (No27の記事と重複するが、後論の都合上再論する。ご了承ください。)

 資本主義経済の目的は「利益」とされている。
利益は、販売額−コスト(製造・仕入れ原価プラス諸経費)で算定される。
これが資本主義の行動原理である「利潤実現」の公式であり、資本主義における企業
経営とはこの差額を最大にすることであると考えられている。
 ところがよく考えてみると、この公式にはとんでもないまやかしが存在する。利益
の算定には「期間損益」という算定方式が採られている。つまり企業の営利活動を1
年間づつ区切って、期間毎に「損益」を算定するのである。

 このことは、現在の会計基準が如何に実際の企業経営と矛盾するものであるかとい
うことを物語るもので、少し突っ込んで考えてみると企業が存続するためにはどうし
ても脱・資本主義という方向を採るべきだ、ということを別の視点から確信させるの
だが、このことはあらためて別の機会に考えたい。

(なお、当記事と深く関連のある議論が2ちゃんねるの哲学板「経済学を哲学する」
というスレッドで展開されている。お暇な方はご参照いただきたい。)

 さて、AB2社があるとする。
将来にわたってずうっと存続することを前提とする企業にとって、今期の経費をでき
るだけ節減して来期に備えて利益を確保すべきだ、といわれている。
(注意・この場合、すでに利益は「資本家への配当のため」という資本主義本来の考
え方から「脱」している!)
 A社は、節約に節約を重ねて、みごと当期利益500を確保したとしよう。一方、B社
では、同じく節約を重ねた、来期の環境変化に対応するため、社員のスキルアップに
教育訓練費500を使ったとしよう。他の条件がまったく等しいと仮定すれば、A社は当
期利益500、対してB社は当期利益0である。期末には、利益額を基準に優劣がつけら
れるからその段階では当然A社がB社よりも優良ということになる。
 問題は次の期である。B社が予想していたとおりの環境変化があったとしよう。
さて、市場への対応はどちらに軍配が上がるだろうか? B社は、前期経費として使
った教育訓練費の成果が発揮され、悠々と目標を達成できたとしよう。A社はどうか?
A社が前期に確保した利益を吐き出してで今からスキルアップを目指してもB社にキ
ャッチアップすることは難しかろう。A社の前期利益は今期の泥縄の対応策に消えて
しまい、今期の損得は・・・。

 ということで、企業は「利益優先」などと考えて、打つべき時に打つべき手を打た
ないとととんでもない取り返しのつかない結果が起きてしまう、ということがあらた
めて確認できる。もちろん、多くの企業の経営者は、通常はこのようなことは十分知
っており、来期以降の存続のため、ということを念頭に意志決定を行っている。
ところが、緊急の意志決定にあたっては資本主義の悪しき「DNA」が作用して、会社は
儲けるためにある、利益が出なきゃ会社じゃない、という「原理原則」を思い出して、
リストラやレッテル張り替え・中身の詰め替えなどなど、とても正気の沙汰とは思え
ないことをやってしまうのである。違法・不法なことをやるときに、資本主義発祥時
代の「営利企業の原理・原則」を思い出して一線を越えるバネにしているわけだが、
「利益原理」は企業にとって百害あって一利無し、一日も早く頭の中から消し去って
しまわなければいけない。

 資本主義のスタートのころは、資本家が配当目的に出資する、これを原資にして機
械などの生産要素を整備する、市場に打って出て収益を確保、利益を分配する、とい
う資本主義の公式が成立した。会社=資本家のもの、会社の目的=利益=資本家への
配当という資本主義のモデルが現実に成り立っていたのである。しかし、この時代で
も企業が存続してこそ配当が得られるということ、目的である「利益」は企業の存続
という大前提あってのことだった、ということには変わりはなかった。つまり、企業
の目的は原始資本主義時代から「何がなんでも利益」というわけではなかったのだ。
 まして現在のように、企業の総資産に占める資本の比率が、50%はおろか場合によ
っては数%という場合でも企業が立派に存続するようになってくると、会社は誰のも
のか、会社の目的は何かということがあらためて問われることが必要になっている。
企業という人の集団、組織の目的はいったい何だろうか。

 全ての組織は組織の外に、組織に先立って存在する目的に貢献するために作られる。
ある組織の目的は組織の外にあり、組織活動の成果は組織の外に現れる、ということ
である。企業も組織であるからには、その成果は企業の外部に現れなければならない。
このことは大切なことなので良く記憶しておいていただきたい。

 さて、問題は営利企業という組織の目的は何か、ということである。企業には他の
組織と大きく異なるところが二つある。その一つが企業に先行して存在する外部の目
的が多様だ、ということである。(もう一つは組織活動のコスト原資を自らの「営業」
活動で稼がなければならない、ということだがこの点は後で論じる)
 企業に参加してくる個々人は、それぞれ、参加に先立って参加を通じて実現したい
目的=企業に対する期待を抱いている。設立時点の創業者には創業者の、出資者には
出資者の目的があり、その後参加してくる社員一人一人もそれぞれ自分の目的がある。
企業は創業者がどのような目的を掲げようとも、これらの企業参加者があらかじめ持
っている目的達成に貢献出来ないと存続することも難しくなる。

 繰り返すが、企業は関係者の期待に応えなければならず、関係者の期待に応えるた
めにはまずは存続しなければならない。突き詰めていけば、この「存続を確保する」
ということが全ての企業に共通する・個別の企業の目的に先行する・目的である。
創業者、経営者が、自分の価値観に基づいてどのような目的を掲げても、その目的を
実現するためには企業はまず存続しなければならない。
はじめに書いたように、「利益」を確保する前に存続が図られなければならない。
 創業者は創業のロマンを実現するため、出資者は配当あるいは上場を期待、社員は
生活の安定・スキルの修得・社会的ポジションの確保等々、社内には様々の目的が持
ち込まれている。企業にはそれらの目的の達成に長期にわたって貢献することが期待
されているのである。
 様々の期待の受け皿である企業がそれらの期待に貢献するためには、まず自分自身
の存続を図らなければならない。存続できなければ期待への貢献はゼロとなり、存続
が危うくなれば個々の目的への貢献も不可能になるからである。

  企業が期待に答えるために「存続」を目指すとなったとたん、企業は、関係者の、
組織に先行する目的・企業に対する期待とははっきり異なる企業独自の目的を持つこ
とになる。様々の目的・期待に応え続けるためには、企業はまず存続しなければなら
ず、存続を維持するためには、成長し続けなければならない。そのためには企業と関
係者個々との関係は相互に相手を手段として自分の目的を達成することを目指さなけ
ればならない。
 相互に手段である、ということは、互いに相手の期待に応える、相手の目的達成に
貢献することを通じて自分の目的を達成する、という関係である。
GIVE&TAKE、つまり、相手の期待を満足させることを通して自分の目的を達成する、
というマーケティング的な関係が企業とその関係者の関係の基本にあることが分かる。

 企業は存続を確保するためには、様々の活動を行う。活動のほとんどにコストとい
う対価の支払いが必要である。また、関係者の期待に応える・貢献するということに
も、人件費、配当などという費目をはじめコストがかかる。このコスト支払いの原資
は一般に売上総利益、粗利と呼ばれるものである。
(自らのコスト原資を「営業活動」から稼ぎ出す、というのが営利事業と非営利事業
との分岐点である。営利事業とは「利を求めて営む」事業ではなく、「利によって営
まれる」事業なのである!)

 組織がその目的を達成するため活動をする、ということは多くの場合コストを伴う。
営利企業は、この活動コストを自らの「営利活動」で稼ぎ出さなければならない、と
いう点で他の組織と基本的に異なるということも記憶しておいていただきたい。
  また、企業にとって「利益」とは、今期の活動から生まれた来期以降の経営活動に
運用可能な資産の増加ということであり、利益=自由に使える資金などでは毛頭ない。
株主への配当も企業から見れば存続に必要な・外部に支払われるコストである。

 このように見てくると、企業にとって重要なのは利益の確保ではなく、企業の存続
=活動に必要な「粗利」を確保することであることが分かる。粗利は経費と利益の原
資だが、これまでに明らかなように、企業から見れば、経費と利益、究極どちらも経
費であることに変わりはない。この粗利を如何に効果的・効率的に活用していくか、
ということで企業の将来に雲泥の差が出てくる。
  例えば、給与。これを単に労働の対価と見なすのか、存続という目的を達成するた
めに必要な将来の能力向上への期ももを含むものと考えるかで、仕事の仕組み・割り
当てが大きく異なってくる。全てのコストが企業の存続を目的とするとすれば、社員
は今日の業務を通じて明日の業務をこなす能力を身につけていかなければならない。

 社内の業務のあり方は、各人の能力涵養ということを織り込んだものであることが
必要である。このことが社内で実現するためには、人間観、企業観、事業観など経営
理念レベルでのこれまでの常識を覆すことが必要である。
すなわち、脱・資本主義の企業経営。

 経費はこれまでの活動に対するコストの支払い、というように考えてはいけない。
将来の存続のために支払うコストであるからには、全てのコストが未来志向で考えら
あるべき、このことを抜きにした一回性の価格重視の選択などは、企業経営のなんた
るかを知らない愚挙ということになる。

 会社という組織形態の機能は、仕組みが発明されたころの「利益追求」にとどまる
ものではない。その機能は、第一に、自分たちの営業活動によってが生み出す粗利を
もって全ての関係者の期待に応えられる組織であること、第二に、その役割(社会的
ニーズに応える)は、非営利組織と変わるものではなく、その差違は活動原資を自分
の事業から生み出す・「利をもって営む」事業体である、ということであること、な
どが理解されたことと思う。

 このことは企業に関係している皆さんが日常的な行動の基本とされているところと
それほど違和は無いはずである。

 営利企業の本質はこのように、投資家の利益を最重視する資本主義の「常識」とは
大きく異なっている。また、社会主義や共産主義の離縁ともまったく無縁である。
このような営利企業の超・資本主義、脱・資本主義的な機能を注視し、これを企業活
動の基本とすることで企業のコストの効果・効率的な活用が可能となり、業績の向上
が期待される。このような企業についてのパラダイムの転換により、脱・資本主義へ
の展望が開かれていく。

 脱・資本主義シリーズ、今回は総論の続きでまたまた堅苦しくなりましたが、次回
からは各論、「期待と貢献」というキーワードで脱・資本主義経営のノウハウを論じ
ます。

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◆quolaid.com情報◆
 
 ※小誌はクオールエイド社サイトの「Flash Note」欄と密接に関わっています。   
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   併読いただければ幸いです。

◆次号:NO.30 02年2月15日(Fri)