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No.21 2001/12/14(Fri) ===================================== ◆ 『コンサルタントの眼』 ★毎週金曜日発行★ ◆□◆ ◆□■□◆ コンセプチュアライザー・タケオノブオが ◆□◆ 経済・社会問題に関する様々な事象を批評。 ◆ ===================================== ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ◆コンサルタントの眼◆ イベント・アトラクション・インセンティブそしてモチベーション ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 集客施設につきもののイベントとアトラクションだが、混同されていること が多い。他にも似たような使われ方をすることがある言葉としてモチベーショ ン、インセンティブなどがある。 今日はこれらの用語について考えてみたい。はじめの **** で仕切った範囲 内で行っている論議は、横道といえば横道である。面倒な人はそのままイベン ト論を読まれても差し支えない。ただし、応用ということを考える人はもちろ ん全体を通読していただきたい。 ********************************************************************** 常日頃、自力思考(自分で考える)を省略している組織では、イベント関係 に限らず、「用語の定義などにはさしてこだわらない、適当に使っていい」と いうことがまかり通っているようだ。自分が勝手に使うものだから、同じ言葉 を相手がどういう意味で使っているかということにもまったくこだわらないこ とになる。 商店街などの会議では「商店街活性化」など議論の中心になる大切な用語に ついても、共通の認識が無いままで議論が進められていることが多い。極端に 言うと使う人の数だけ定義が違う、というなかで結論が出てしまうということ である。「商店街活性化とは商店街がどうなることか」という肝心のことにつ いて共通の立場に立つという前に活性化策が提出され・決定され・実行されて いる。 そういう取り組み方が原因の一つとなって、全国津々浦々、活性化に取り組 んでいない商店街はほとんど無いが、活性化に成功している商店街もほとんど 無い、という現状が起きている。「活性化」という言葉でなにを表すのか、と いうことを吟味しないままで活性化事業に突っ込んでいく、という行動パター ンが商店街に引き起こしている結果をふまえて用語の定義の大切さを確認して おきたい。 用語の定義といっても一つの用語にはそれにきちんと合致する一つの物事が ある、それをはずした使い方をしてはダメだ、ということではない。以前から 申しあげているように、用語の使い方は定義次第であり、どのように定義しよ うがカラスの勝手、というのが私の立場である。勝手ではあるが、次の2点に は十分留意していただきたい。 第一に、通常、たいていの言葉には世間で通用している用法がある。辞書な どに示されている用法などですね。これは特に差し支えがない限り、遵守して いくべきである。(その理由について述べると長くかつ複雑な議論になるので 省略する。) 用語の定義は、出来るだけ厳密にしよう、などと考えると説明に用いる普通 名詞のあれこれについてまでいちいち定義しなければならなくなって、きりが ない。面倒さを背負い込むことがいやなら伝統に従いましょう、ということで ご了解いただきたい。 第二に、そうはいいながら、世間で曖昧なまま通用している専門用語につい ては、「こういう意味でこの言葉を使う」ということを自分なりにきちんと整 理しておくことが必要である。専門用語の意味が混乱していると、事業に不可 欠の様々なことがらの論理的なつながりが見えにくくなったり、混乱したりす る。事業の目的と手段の関係もあやふやになってしまう。 例えば、私が再三指摘しているように、商店街活性化が成功しない理由の一 つは、「商店街活性化」という言葉がきちんと定義されないまま使用されてい る、ということにある。定義が共有されていない曖昧な用語については、あら ためて関係者の間で定義をしておくことが大切である。このことはいくら強調 しても強調しすぎることはないと思う。 言葉の定義をするためには、その用語が用いられる状況などについての知識 が必要である。それなりに勉強することが必要になることもあるだろう。 この勉強をしておくと、定義を共有していない人が用いるくだんの用語につ いて、それが使われている文脈からその定義を推測することが出来る。用語の 定義の食い違いは、プロジェクトのスタート時点などでは良くあることだが、 定義を共有する作業の前にお互いのこれまでの用語法を知ることで得られるこ とは多いはずである。 以下、これらのことを念頭に置きながら、集客ツールとしてのイベントなど について考える。 ********************************************************************** イベントについて。 関連の深い言葉として浮かび上がってくるのは、モチベーション、アトラク ション、インセンティブなど。これの言葉をどう使い分けるか、ということは 企業が直面するマーケティング上のソリューション創発という課題にとってき わめて重要である。 まず、本来の意味を考えてみよう。 「イベント」:起きることが期待され・待ち望まれている出来事 「アトラクション」:関係者を行事などにより多く参加させるために企画され る本来の事業に付随して催される愉楽的な催し 「インセンティブ」:余り気の進まない行動に赴かせるために与えられるアメ 「モチベーション」:相手の価値観や目的の実現への貢献を合理的に期待させ ることでこちらが期待する行動を誘発する仕掛け というあたりがそれぞれの単語のだいたいの意義である。(単語の定義に余 り厳密さを求めるとろくなことはないので注意すること。イベントのあり方を めぐる話がイベントの定義をめぐる話に変わると収拾がつかなくなる。これは 「言葉の定義」については、学問の世界を含めていつでも同じようなことが言 える。) それぞれの言葉をマ−ケティング上で関係づけてみれば、「モチベーション 」がもっとも顧客志向であり顧客の価値観や購買目的に対応したソリューショ ンを提案し続けることでストアロイヤリティを獲得する、という戦略に合致す る。 次は「イベント」。起こることが待ち望まれていること、という定義から考 えればモチベーションよりも軽い。ちょっとしたノリで参加する、つまみ食い する、同種の催しをいろいろ体験する、ということである。 参加の目的は「イベントを楽しむこと」であるが、企業とその顧客との関係 でいえば、イベントそれ自体を楽しむことが目的で参加してくる顧客に対して 企業は何を期待してイベントを催すのか、ということが問題である。端的に言 って、今日企業がその業績アップをねらって企画するイベントの多くは、その 役割を果たしきっていないのではないか。 イベント、元々の意味からはワクワクドキドキの体験がイベントである。も の余り時代、情報過多、体験飽満という時代に「売らんかな」という下心の見 え透いた企業のイベントではなかなか効果が得られない。逆にモーターショー、 ゲームの新作発表会などはそれ自体がワクワクドキドキ的イベントとして盛況 を呈している。 商業集積のイベントはあらためて顧客がその集積に何を期待しているのか、 「来店目的」を再確認してから企画しなければならない。 「アトラクション」、多いのは団体の総会などに併せて催される講演など。 総会だけでは出席者が少ないことが予想されるので著名人の講演などを用意し て参加者の出足を誘おうということ。文字通り「人寄せパンダ」である。 商店街が企画する「イベント」はほとんどが「アトラクション」であること が多い。団体の会議などの場合は、参加を呼びかける母集団が定まっているの でアトラクションで誘致する参加者はそのまま会議参加者であるからそれなり の効果が期待されるが、商店街などのアトラクションの場合はなかなかそうは いかない。 最近商店街でよく企画される「商品は売れなくてもとりあえず活気だけでも 」というアトラクションは、どうして商店街が取り組まなければならないのか、 目的も理由が全く考えられていない催しである。 例えば、かって多くの商店街で取り組まれた夜市。人集めには子供をねらえ、 ということで金魚すくいその他「ちびっ子」向けアトラクションを企画すると かっては確かにファミリーが押し寄せ、通りは大盛況だった。ところが街の 「テナントミックス」はファミリー向けの店舗がほとんど無い。通りの金魚す くいには子供づれが群がっているが、店のなかには誰も入っていないという情 景がよく見られたものである。 「人さえ集まればものが売れた」高度成長期以前ならともかく、現在では集 客力のあるアトラクション企画で人集めに成功しても、物販にはつながらない、 ということが誰の目にも明らかになってきている。 「インセンティブ」、どちらかといえば余り気のりのしない・気持ちが浮き 立つこともないルーティーンの行動や業務に関心・意欲を持たせる契機・刺激 となるもの。 「〇〇〇をしてくれたらお小遣いをあげる」というお駄賃みたいなものであ る。典型的な例は商店街やスーパーのポイントカードシステム。 どこの店でも買っても変わり映えのしない買い物の場合、当店に誘引するに は商品以外の魅力が必要だ、ということでポイント制が始まり、2倍セール、 3倍セール、平日の人集めに5倍セールと止まるところを知らない。今どき最 寄り品について行きつけの買い物行き先のない主婦など一人もいないから、こ れで集められるのはもちろん、日頃から当店を買い物行き先として認知してい るお客ばかり、ということなのに。 いうまでもなく、低価格やポイントなど商品の使用価値以外でお客を集めよ うとする商法は、競合が採用しない間しか効力がない。ポイントカードはスト アロイヤリティを高める手法と位置付けられることが多いが、競合と買い物目 的=商品構成で競争できない企業が、当座の優位を確保するために行う競争手 段であり、競合が採用すればたちまち元の木阿弥になってしまう。 商店街が採用しているポイントカード、ひところは東京世田谷の烏山商店街 というところがメッカ、全国の商店街関係者で知らない者はいないという「成 功事例」とされ、「烏山方式」は活性化の成功事例として後に続く街が多かっ たようである。ところが不思議なことに(笑)、いつまで経っても成功事例は 烏山だけ、後に続くはずの同方式を採用した商店街が成功したという話は全く 聞こえてこない。 後続商店街で成功しなかった理由は明快である。烏山は「最寄り型商店街」、 ポイント制度は、最寄り商店街向け、それも街区内に有力なスーパーがありポ イントに参加しているという場合に始めて有効なインセンティブなのに、模倣 して採用した商店街の多くは「買い回り型商店街」だったということ。これで は成功しないのが当たり前である。 ポイントシステムの場合、インセンティブのインセンティブとして歌舞伎、 野球にご招待というのも多い。自店の商品を買ってもらうために、そこまでし なけれ売れない、そこまでしないと買ってもらえない商品しか扱っていないこ とを情けないと思うくらいでないと商店街活性化などは夢のまた夢である。 補助金を使ってシャッターに絵を描く、通りの空き店舗を利用して無料託児 所を設置する、などなど、シャッターの外側のあれこれの工夫でシャッターの 内側の売上げを何とかしようという考え方=インセンティブは、商売繁盛の敵 だと考えるべきである。商売はあくまで商品・お客の使用価値を販売する、と いう原点に立たないとモチベーションにはならない。 ところで最近は烏山のポイントの話も余り聞かなくなったが、大丈夫かな。 スーパーがこければポイントもこけますからね。 そういえば最近、商店のエコステーションとやら、空き缶を持ってきたら景 品をあげる、という「活性化策」がはやり始めたらしい。これもスーパーが街 区内に立地している最寄り商店街にだけ通用する情けない限りのインセンティ ブだが、シャッターの外側ばかりに目が向いている商店主にバカ受け中らしい。 たぶんポイントカードがうまくいかなかったところが「目先を変えて」導入し ているのだろうが、空き缶を集めたら、どうして売上げ増進に結びつくのか、 あなたの街がこれまで不振だったのは空き缶を集めていなかったからなのか、 一度じっくり考えてみられることをお勧めしておこう。 最後に「モチベーション」、相手の価値観や目的達成に貢献するなにごとか を提供することで、内発的な行動を実現する。「あの子がいるからあのラウン ジへ行く」、内発的な行動の理由。マーケティングの極意、「相手の問題解決 に貢献することを通して自分の目的を達成する」ということから考えれば、業 種を問わず企業が取り組むべき顧客に対する働きかけは、モチベーション向上 を基本的な目的としなければならないことはいうまでもない。 人がわざわざ商店街に赴き、そこに提案されている商品を買うのは、何も買 うことそれ自体が目的ではない。買って・持って帰り・自分の生活で使うこと、 生活のなかで役に立たせること、ソリューションを調達することが目的である。 人が商品を買うのは、自分の生活を作りあげるための道具・材料としてであり、 始めに生活ありき、自分の生活にふさわしい道具・材料としての特性を備えて いることが購買する商品を選定する際の第一の基準である。 顧客の購買先企業に対する評価は、購買した商品の自分の生活への「収まり 具合」の評価を通して行われる。企業や商店街の皆さんがイベントの反省など をしているとき、顧客は買ってきた商品の自分の生活での使い勝手、満足度合 いを評価しているのだ。恐ろしいことに、この評価の時点では、買い物の時点 でインセンティブとして提供されていた価格・景品・ポイント・催し等々はい っさい評価の対象にはならないのである。 今日の買い物に対する評価が明日の買い物行き先を決定する。今日買った商 品の使用価値、使った局面での満足度合いこそが、次の買い物機会に再び自店 を利用してもらえるか否かを決定するのである。企業が実現しなければならな いモチベーションは「生活を堪能するための買い物が出来る」という顧客の期 待であることに疑問の余地はない。 かって商店街には「得意客」という言葉があった。得意とは「期待している ことがかなえられて満足している様子」である。得意客とは、「買い物のたび に期待している買い物が出来て満足しているお客」のことである。これまでの 買い物の結果への満足が次の買い物満足を期待させてなじみの店へ足を向けさ せる。 得意客とは、自分の満足を最優先の基準として行き先を探索する、というこ とでは一見のお客と同じである。何度か続けて期待が裏切られれば得意客はい つの間にか姿を見せなくなる。 企業の顧客に対する働きかけは、モチベーション=「顧客の期待実現への貢 献」という視点でとらえられ、企画され、提供されないと「アトラクション」、 「インセンティブ」へと堕落する。顧客誘引策としてイベントなどを云々する 前に、さしあたりこの程度のことは考えておかないと「もの余り」「買い控え」 時代の経営は成り立たない。 イベントとはワクワクドキドキへの期待であり体験である。 繁盛しているお店や施設にはその客層にとって出かけること自体、それが存 在すること自体がすでにイベントである。 アトラクションやインセンティブは、成熟社会のマーケティングツールとし ては陳腐である。企業・商店街たるもの、提案している商品・サービスを購入 するために、時間とお金をかけてわざわざ出かけてくることがお客にとってイ ベントである、と言い切れるくらいの店づくりを実現しないとこれから先の繁 盛は難しい。 もちろん、存在すること自体がイベントであるという店や企業は顧客に対す る強いモチベーションを装備しているということである。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆quolaid.com情報◆ ※FLASH NOTE http://www.quolaid.com/cgi2/sunbbs/index.html ■ 商店街の勉強会(承前) Date: 2001-12-08 (Sat) ■ 勉強会2題 Date: 2001-12-07 (Fri) ◆次号:NO.22 12月 21日(fri) |