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〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜    No.20 2001/12/07(Fri)
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  ◆       『コンサルタントの眼』   ★毎週金曜日発行★ 
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◆□■□◆ コンセプチュアライザー・タケオノブオが     
 ◆□◆      経済・社会問題に関する様々な事象を批評。    
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◆コンサルタントの眼◆
                     「観光商業」への一視点
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  仕事柄、各地の『中心市街地活性化基本計画』を見ることが多い。ほとん
 どといって良いくらいの計画に地活性化のためのメニューとして「歴史と文
 化・景観の活用」というテーマが掲げられている。中心市街地を産業立地と
 して再生させる、という視点から見ると、中心市街地に散在する歴史的な
 「資源」その他を利用して観光来訪スポットを作って集客しようという「戦
 略」である。つまり、中心市街地の各種資源、例えば土蔵・白壁作りなどの
 古い建物群を修復して展示・物販・飲食施設として改造・提供することで広
 域から観光客を吸引する、中心商店街への回遊を期待するというわけである。
  果たして成功するだろうか。

  あるモデル的な観光商業の事例では、(数年前の数字だが)年間集客数:
 120万人、売上高:6億円となっている。つまり来街客一人あたりの購買単
 価は500円ということになる。これは「観光商業」で活性化を目指す構想を
 持っている都市にとって、大変重要な数字である。これを基礎にすると、
 年商3,000万円の観光商業を成立させるには、6万人の新規の来街者が必要
 だということになる。店舗が2軒になれば12万人。どうしてこのような膨大
 な客数が必要なのか。

  中心市街地に新設される観光資源は多くの場合、お客(ツアー会社)から
 見れば周囲の観光訪問地とセットで周遊する「回遊型観光スポット」、「双
 六観光(命名・タケオ)」型の観光地、というものが多い。
  「双六観光」=周遊観光とは、広域で名所旧跡巡りを軸に周遊ルートを設
 定し、格安料金でのバスツアー、という旅行エージェントお得意の観光パタ
 ーンである。日帰りまたは1泊2日で出来るだけ多くの観光スポットを走り
 回る。一つのスポットの滞留時間は1時間程度ということになる。

  双六観光の収益構造は次のようになっている。
  (1)参加客の料金は超低額に設定して集客し、
  (2)全行程でのお客の消費を自社の収益機会に仕立てることで低料金を補填
  する。

  つまり、行程中お客が散財するあらゆる機会が自社の収益につながるよう
 なシステムを作ることで超低料金を成立させている。行程中の食事の場所、
 移動結節点での土産購入などお客が散財する機会については、立ち寄る施設
 を決めて「協定」を結んでおり、施設の売上げからマージンを受け取る、と
 いう仕組みが作られているのである。マージンは10〜15%という高率であり、
 協定施設の経営構造(商品構成その他)を規定する。お客は、食事、買い物
 など自分たちの散財機会がすべてツアー会社のリベート確保の機会となるよ
 うに設計された仕組みの上を移動しているのである。

  お客は自分の好きな場店で自分の気に入るものを買いたいと考えている、
 ところがそれではエージェントは経営が成り立たないのである。なるべく協
 定施設で買い物してもらう(=なるべく他の施設の土産店では買わせない)
 ために細々とした涙ぐましいノウハウを使うことになる。極端な例では、吉
 野ヶ里遺跡が一般公開された当時、バスツアーのお客を現地の協定を結んで
 いない売店に入店させないように、域外の観光物産館業が社員を派遣してピ
 ケを張った、という有名な話がある。

  さて、新設される中心市街地の観光スポットは、多くの場合、双六観光の
 対象となる程度の規模であり、またエージェントと協定が結べない条件にあ
 ることが多い。
  このことから施設経営上の様々な問題が生じてくる。

  第一に、協定を結んでいない観光施設は、バスツアーが設定している散財
 の仕組みからはみ出す部分を対象に売上げを作らなければならないというこ
 とである。前述のようにツアー会社としては協定外の施設ではお客にびた一
 文使ってもらいたくない、というのが本音だから、協定外の観光スポットに
 立ち寄る前には、車内でなにがしかの手だてが講じられることも珍しくない。
 特に食事については、確実に協定施設を利用することになるから協定外の観
 光スポットにバスツアーが食事時間に訪れるということはあり得ない。

  第二に、滞留時間という問題もある。物販施設の売上げとお客の滞留時間
 の相関については周知のところだが、「双六観光」の場合、あるスポットに
 到着したとき、添乗員・ツアーコンダクターの最大の関心事は、「スケジュ
 ール通りにここを出発すること」である。このためのノウハウもいろいろあ
 るようだ。なかなかお客が自由にお店をショッピングして回る、という時間
 はない。必要な人だけが行き当たりばったりで土産を購入、次のスポットに
 向かうことになる。観光スポットが吸引したお客がスポットの周辺の商店街
 へ回遊するなどということはあり得ない。

  第三に、最近の観光客の購買動態としては、いかにも「観光土産」という
 体裁・仕様のものよりも帰宅して日常生活で活用できるもの、地元の人たち
 から支持されている商品などが好まれているということ。お客の事前の情報
 収集も徹底しており、有名観光地に連袂している名物土産店も売れる店、売
 れない店が際だってきている。観光に行くたびに互いに隣近所に土産を配る、
 という風習も過去のものとなっている。しこたま買い込む客もスポットそれ
 ぞれで買うことになるから一カ所あたりの購入は知れたものである。
  このような理由が重なって双六観光の各スポットでの消費は少量低額とな
 る。

  ということで冒頭の客単価500円が結果するわけである。
 観光商業を目指す場合は、このからくりをよく承知し、「にもかかわらず、
 こうすれば中心市街地全体の活性化が実現する」という戦略を講じることが
 必要になる。
  新しく観光スポットを作ってペイさせていくためには、スタートから少な
 くとも数10万という新規の集客が見込めないと土産屋さえ成り立たない、と
 いうことである。新たに「歴史と文化」で10万単位の集客力のある施設を開
 設する、ということはこのご時世、とても民間ペースでは不可能であり、勢
 い、公設民営3セク方式になるわけであるが・・・。この施設が成立したと
 しても、中心商店街の活性化につながるかというとこれは全く別の話である。

   新設する観光スポットで吸引したお客を中心商店街へ回遊させる、この人
 通りを当てに個々の店舗が商売を組み立てることで活性化を実現する、とい
 うシナリオだが、これは、はっきりいって無い物ねだり・絶対に実現できな
 いことである。

  イベントで集めたお客が個店の入店・購買に結びつかないのと全く同じ理
 由で観光客は中心商店街の店に買い物目的で立ち寄ることはない。観光スポ
 ット訪問の場合、来街目的・消費購買目的ともに中心商店街が対応しようと
 している購買目的とは全く異なっている、ということである。中心商店街に
 於ける観光客の購買行動は(土産品を除き)、衝動買いということになる。
 衝動買いとは、「買う予定がなかったのに商品を見たとたん欲しくなって買
 ってしまう」というパターンの買い物である。活性化が必要な店で期待でき
 る購買パターンではないのだ。
  また、観光客の購買パターンに対応する業態への転換を目指す、という方
 向もなかなか成功しない。先にも述べたように客単価500円である。30店舗
 の観光商業が成立するにはどれだけの集客が必要になるか。

  もう一度確認しておこう、観光スポットで集客したお客の購買額は500円、
 この客相を対象にして最低3,000万円の売上げを確保するためには、1店舗
 あたり6万人の新規来街客が必要である。数十店規模の商店街の戦略として
 採用できる話ではない。
  先行事例の場合は、三セク(経営陣は無給)で・空き店舗・アルバイト活
 用という方式を採用しているから成り立っているのである。駐車場その他の
 観光地に付属する施設はもちろん新設しなければならないが、これもコスト
 パフォーマンスは良くないことは明白である。

  もう一つ。最近、長崎街道など、かっての「○○○街道」を街道沿いの地
 域が連携して地域活性化に活かそうという企画が多くなっている。これも上
 記の分析を援用すれば、「街道」のうち宿泊拠点を持っている都市の一人勝
 ちということになる。宿泊が主体となる温泉地の場合、日帰りを含む客単価
 が(私が承知している事例では)8,000円程度に跳ね上がる。6億の売上げ
 は75,000人の来訪で可能である。ショッピング自体、宿泊客と日帰り客で
 はこれはもう桁違いなのだ。

  はじめに紹介したのは、地元で黒壁と呼ばれていた伝統的建造物を利用し
 て観光スポットを作った事例である。一部で「中心市街地活性化のモデル」
 といわれて全国から視察団がひっきりなしに訪れているらしいが、ここの課
 題も客単価の低さと中心商店街への回遊が実現しないこと。観光・交流人口
 における「宿泊」の重要性に着目してそのノウハウ確保のためもあって他地
 域の「黒船」企画との連携を模索していることは知る人ぞ知るところである。

  「商業観光」を目指す場合は、宿泊の可能性を十分見極める、条件を整備
 する、ということが大きな条件になることは間違いないが、この場合、問題
 はさらに大きくなる。果たして中心市街地の観光スポットが宿泊を伴うほど
 の滞留性を持つ資源であるかどうか、ということである。宿泊が大事といわ
 れてホテルと併設したからといってもととなる目的がなければお客は添乗員
 にせき立てられながらひたすら「上がり」を目指すのである。

  観光商業を志向する中心市街地にとって、以上は必ず一度は十分検討しク
 リアすべき課題である。成功事例とマスコミで取り上げられる、土蔵白壁造
 りを土産店に改造し、エプロン姿のおばさんが道行く人に漬け物その他の試
 食を勧めている、という光景を見るたびに、嘘だろー、もー終わりだろーと
 思うのだが、まあ、よく続くことである。
  観光スポットになる位の施設である。かっては地域でも進取の気概に富ん
 だ人物たちが作った周辺を圧倒するような施設であったろうものである。安
 易に漬け物売りなどに利用したのでは、ご先祖さまが草葉の陰で泣いている
 のではないか。

  私は何も中心市街地の活性化策として開発される観光資源に可能性が絶対
 にないといっているわけではない。「成功事例」と喧伝されている事例の中
 身はこんなものではないか、ということであり、「観光商業」に中心市街地
 の活路をみいだそうとする場合は、少なくとも以上のような点については十
 分検討しておかなければいけないのではないかと提起しているのである。

  もちろん、私どもは日ごろから、中心商店街にはラグジュアリィニーズに
 対応するショッピングモールへ転換することで、これまでにない繁栄を獲得
 するチャンスに直面している。成功のおぼつかない商業観光などへの関心は
 すっぱり断ち切って、地域の生活のいっそうの充実に寄与することを事業機
 会とする商店街商業の再生を目指すべきである、と主張していることはご承
 知の通りである。
 
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      ■ 商店街の活気と活性化 Date: 2001-12-02 (Sun) 

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◆次号:NO.21  12月 14日(fri)