テナントミックスと来ればお次は当然、標題のとおり、SCにとって核店舗とはなにか、その機能は何か、ということになる。
その前にちょっと、お断りをしておきたい。当社の商業関係の主張・提案では何かといえば「アメリカでは」という言葉が出てくる。さらに「カタカナ」用語が多発される。このあたり、わざわざ忠告していただいたりするし、現場では言葉を使える人vs聞いたことも無い人との微妙な相違が出てきたり、問題も無いではない。私どもも改善できるものならそれに越したことはないと思い、2,3試みたこともあるが、これまでに案出された対応策は退嬰的なものが多かった。つまり、不勉強な連中の機嫌取り、でもこれはホントやるだけ無駄ですからね。
当分はこのスタイルでいきたいと考えるので、まず「アメリカ一辺倒」の理由を説明しておきたい。
もっとも基本的な理由は、アメリカには今でもパイオニアスピリッツというか欲と道連れというか、新しい事業スタイルを作り出す、というところに
一つの社会的な価値観・モチベーションがあり、よく機能しているらしいということである。商業の面に限っても、チェーンストアの出現、スーパーマーケット、GMS、コンビニエンスストア等々、世界標準となった小売業態の多くはアメリカ原産が多い。これらが世に出てくるいきさつなどはこれからの経営に非常に参考になる。本も出ているので暇なときに一読されるとよいと思う。
新業態にどうしてアメリカ原産が多いかというと、これはハッキリしている。「新業態の創造」はお金になるのです。新しい小売業態を作り出すー繁盛するーチェーン化という過程で全部ひっくるめて売却する、という方法がある。業態=商品でありヒット業態を作り出せばその時点で悠々自適・ビジネスから引退して好きな一生が送れる、という仕組みが出来上がっているから、これに挑戦する青年が後を絶たない。
彼らの着想がどこから来るかといえば、「現在主流を占めている業態がもたらしている不便・不満の解消」ということが一つの切り口になる。例えば生鮮3品とグローサリーをそれぞれ別の店で「買い回り」しなければならない状況から、一青年の発想する「スーパーマーケット」が生まれた、というように。このようにアメリカには、「顧客の新しい満足」を生み出すシステムを考えれば、エンジェルがつき、資本が集まり・・、という仕組みが後押しをする。この仕組みを前提に野心的な若者が創業を目指す・・・・、というわけ。 ひるがえって大店法下の4我が国では新業態の創出どころかアメリカからの直輸入さえほとんど常にダイエーによってになわれてきた、という情けない状態である。OKの輸入自体がまた、きわめて皮相的なものであり、まあ、その結果として現在のGMS屋さん達の苦境が有るわけだがそのことはまた別の機会に。(何しろ今日のテーマは「核店舗」ですからね)
もう一つは、もとをただせば同じことだが、当面の競争相手のみならずいつ何時新業態が出現しないとも限らない、という競争の世界、ついでに新しい仕組みを考えればビジネスモデルとしてそれ自体が商品になるという実態。小売業の経営技術、店舗運営技術の改革・改善も当然日進月歩となる。で、これは一応体系的になっているので慣れていない人や鬼畜米英気分の人には申し訳ないが、専門用語についてはカタカナのままで使っていく。「専門用語」ということでご了解賜りたい。こんなところで挫折しないよう、くれぐれも折り合いを付けていただきたい。(難しそうなのはほんの入り口だけ、慣れれば至極当たり前の話ばかり、ちなみに我が家の高校生の豚児は、こーゆー当たり前の話で何で商売になるのか分からん、とほざいております。商業者という色眼鏡を外せば言うも恥ずかしいくらいジョーシキの話だということです。)
もちろん、これら専門語の多くはとっくに輸入されているわけだが、まあ、ひどい使い方をされてますからねぇ。もう一度きちんと説明してからでないとものの役に立たない状態。このことは用語だけではなく、理論のレベルでも同様である。例えば、商業集積間の吸引確率を導くハフモデルなんか、「郊外型SCなどが存在しない時代の二つの都市の中心商店街間の吸引力」に関する仮説としてアメリカで創発されたが、輸入されるやいなや対象を商業一般に拡大し、あげく、郊外型SCと中心商店街との競合関係の客観的数値だという勘違いまで生まれてくる始末。これはハッキリ間違いですからね。(おっと、このあたりは本編で詳しくやってますのでいずれアップします。)
ということで、以上をもってアメリカを何故引き合いに出すか、何故カタカナを多用するか、ということの説明とする。
(わー前置きが長くなったー)
核店舗は、キーストア、キーテナントとも呼ばれ、日本でいえばショッピングセンターの中で一番広い店舗、くらいの理解だろう。あるいは多くの場合、キーテナント=デベロッパーというのがこれまでのSC開発の仕組みなので、キーテナント=デベロッパーの直営店、という理解もこれから出てくるかも知れない。これは多少ニュアンスが違うので要注意。
核店舗は、アンカーストアと呼ばれることもある。アンカーとは錨のこと。どうして核店舗がアンカーストアと呼ばれるかといえば、船における錨の
役割をSCにおける核店舗が果たすから。嵐の襲来が予測されると大型船は置きに出て錨をおろして嵐を待ちかまえる。船体は波風に弄ばれているようだが錨が下りているために一定の場所で船体の安全を保ちながら嵐をやり過ごす。
錨は海面の状態がどのように変化しようとも船を初期の場所にとどめておく、という役割を果たす。
SCにおけるアンカーストア=核店舗とは、「この店がある限り、他のテナントがどんなに入れ替わってもSCの性格が変わることはない」という性格を持ったテナントのことである。このことは商業集積を考えるうえできわめて重要なところなので特にしっかり理解しておいていただきたい。例えば、郊外型SCの核店舗として日本型GMSといわれたりする量販百貨店が名実ともに位置していたとする。そうするとそのSCは、量販百貨店が持っている「来店目的」をその来街(SC)目的にせざるを得ない、というか自動的にそういうことになってしまう、ということである。サブテナントに何を持ってこようと核店舗が変わらない限りSCの性格は変わらないし、お客の来街目的も変わることはない、否、変えることは出来ない、ということである。
このことのドラスティックな事例が「生活百貨店」を標榜しGMSの自己変革として一時期注目されたサテイの現状であると思う。
私どもは、今後純化(お客の選別による淘汰)していくあるべきSCとして3つの類型を挙げている。もうお分かりと思うが、この3つの類型それぞれは異なった業態をアンカーストアとして誘致しなければならない。これまでのように近隣型も地域型も広域型も核店舗はみんな量販百貨店、ダイエー、ジャスコ、IYドーだ、ということではお客にそっぽを向かれるのは当然だ。
(このあたりは、『日本スーパーマーケット原論』安土 敏 ぱるす出版
に詳しい。ちなみに同書は商業関係者必読文献の一つ)
量販百貨店とは「売れるものならなんでも売る」という高度成長期前半の消費ニーズに対応した業態だから、これからのSCの3類型のどれにも合致しないということが自動的に結論される。これから新設されるSCの核店舗としては絶対に採用してはならない業態なのだ。(だってそうでしょ、@近所のスーパーに比べて近くも便利でもない、Aアウトレットなどディスカウント業態に比べて安いわけでもない、Bアップスケールほど洗練されてもいない・・・)
「核店舗」の位置づけが分かったところでわれわれにとって問題は、中心商店街が目指すショッピングモールの核店舗には何がふさわしいのか、ということ。これは当然、新しいニーズに対応する内容を持った百貨店が座るべき位置である。だが、残念ながら現在の地方百貨店はそのようなポジションにないし、多分、その位置をねらう力も備わっていない。福岡ぐらいの都市の百貨店だとそこそこ力が付いてきたのかな、と評価されるが(なんと海外ブランドの撤退が逆効果だった?)、もっと中小規模の都市だとかろうじて残っている地元資本の百貨店には変革に挑むエネルギーに乏しい、というのがわれわれの知見である。地場百貨店の活性化、これは中心市街地活性化の鍵となる基本的な課題かも知れない。ま、あの売り場を一体何で埋めるのか、と言う問題があるのだが。
当社の地元のようにもっと小さな街だと、無い物ねだりはせずに街ぐるみ・核無し、という基本路線でモールづくりに邁進することになる。ショッピングモールは小規模テナントの連なりで作り上げるというのが基本だ。30坪以上もあるお店だと品揃えが大変。極論すれば小さければ小さいほど使い勝手がよい、というのがモールのテナント用の店舗である。
最後は定番の個店の話になってしまったが、SCにおける核店舗の位置、意義について私どもの理論的な立場をご理解いただいたことと思う。新しい知識が求められるのは、直面している課題が既成・既存の知識体系では対応できない、という予感があるからであろう。さしあたり、私どもの提案する理路で核店舗その他について考えていただければ幸いである。何、不都合が出てきたり、新しい優れた提案が出てきた時は、なんの躊躇もいらない、さっさと乗り換えればよいのだから。
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