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FLASH NOTE 2001.06 保存版


F006■中心市街地の大型商業集積の命運 (2001.6.29)

 多くの都市の「中心市街地活性化基本計画」において活性化の牽引車的な役割を果たすことを期待して大型商業集積の設置が計画されている。中には既に建設が終わっているところもあるが、残念なことに不振が報じられている例が多いようだ。

 構造改革など漠然とした不安による消費控えなど、施設自体の努力ではどうにもならないマクロ環境の急激な変化があって気の毒な面もたしかにある。
しかし考えてみれば、大きいといっても高々一個の商業集積である。果たしてマクロの変化の直撃を受け、これだけに左右されるものだろうか。もしそうだとすればその影響は全ての商業集積に等しく現れるはずであるが、そうはなっていないことは誰の目にも確かである。

 さらに、不振の原因が本当にマクロの変化にあったにせよ、経営陣はそのことをもって「やむを得ない、仕方がない」と言って能事終わりと言うわけには行かない。ひとまずマクロの変化は脇に置いて、いったいわれわれの集積は消費者から見てどんな効用を果たしているだろうか、ということをあらためて考え、経営が成立するために実現すべき効用を考え、さらにこれを出来るだけ大きくすることを図るべきである。

 最近よく「デスティネーション」という言葉を聞く。商業集積の場合、これは「来店目的」というような意味で用いられるが、いったい自分たちの集積はテナント構成全体でどのような来街目的を作り上げているか、いったい集積は誰が何のために来るところとして現存しているか、ということをあらためてシビアに検討してみることが必要である。

 さらにいえば、この「デスティネーション」は、商圏(お客の購買行動圏)内において独占的な優位を占めることが出来る内容を持っていることが必要である。もちろん商圏は「デスティネーション」の内容によって大きく異なる。
メディアで報じられることが多い福岡SBC、佐賀エスプラッツを例に考えてみよう。


 SBCの場合、テナントの集合によっていったいどのような来店目的を実現しようとしているのかということ=デスティネーションが明確でない。テナントとしてそうそうたるブランドが招聘しているが、これらのテナント群が全体としてどのような相乗効果を発揮しているかということが問題である。ブランド愛顧客の購買行動から見てSBCというコンセプトが本当に魅力があるのか、集積としての効果が生まれているのかということである。ここのテナントへの来店客の購買行動圏=競合行き先はとてつもなく広く、天神の路面店から東京、香港から欧米のショッピングモールまでが含まれる。SBCに参加する各ブランドはこれら各地の店舗と店づくり全体の充実振りで競い合うことになるわけだが、このときSBCの集積としての力が応援してくれる訳ではない。広域での競争に良く耐え、勝ち抜いていくだけの力を個々の店舗が「ブランド」ではなく「店づくり」として備えているか、ということが問題である。

 自分の競合相手が誰であるかを見極め、相手に対する優位を築くことが出来ない集積は敗退せざるを得ない。このとき、優位とは「お客の選択基準」において競合と隔絶したポジションのことである。博多リバレインを商業集積として見たとき、SBC=スーパーブランドシティというコンセプトでは、せっかくの条件を商業集積としての優位性として活かすことは出来ない。


 エスプラッツの場合は、同じ課題の異なった現れに直面しているようである。一個の商業集積として見た場合、エスプラッツが実現し提供している「デスティネーション」はどのような客相のいかなる来店・購買目的なのか。デスティネーションが来店客に十分理解される、というレベルでテナントミックスの店づくりが行われているとは言い難い。それぞれの店舗の独自の経営方針に基づいて店づくりが行われており、テナント全体で相乗的に来店目的を作り上げる、という点で不十分のようである。

 この結果、郊外型SCとは明らかに異なった集積全体の総合的なデスティネーションを作り上げ、佐賀市に限らない広域から集客する、というパターンを作り上げ切っていない。簡単にいえばエスプラッツの場合、大和町にオープンしたジャスコ以上の広域から集客するデスティネーションを実現していない、ということである。

 商業集積のデスティネーションは、各テナントの店づくりが実現している個々のデスティネーションが集積のコンセプトの方向でまとまっていることで実現される。各テナントのデスティネーションづくりにあたってその方向を指示する、「集積としてのコンセプト」が明確でなかったり、状況にミスマッチだったりすると、集積としての集客力は著しく弱まり、その結果、各テナントはそれぞれ厳しい立地条件のなかで孤立し苦戦することになりかねない。このことはSBCとも共通する課題であろう。


 一般に、中心市街地という特種な立地に、郊外型SCを横目に見ながら来店してもらう、お客にそのような行動をしてもらうためにはどのようなデスティネーションを作り上げるべきか、ということを考えなければならない。それは結局集積のコンセプトをどう決定するか、ということに帰着する。

 集積のコンセプトは、集積全体が実現する特定の来店目的をはっきり示す内容で作ることが必要である。このことは「商業集積間競争」が本格化している現在の商環境において避けることの出来ない課題である。特にこれから中心市街地において開設される商業集積が留意しなければならないことは、郊外型SCとはっきり区別したデスティネーションを作り上げなければならない、いうことである。郊外型SCこそ小売業の花形である、といった漠然とした認識をもって、郊外とは条件の異なる中心市街地での開設を目指すというようなことでは、初めから不振に陥ることが運命づけられているといって過言ではない。

 大型集積間の競争の武器は売り場面積の大小ではなく、提供している「デスティネーション」の独自性と優位性=充実度合いである。多くの商業集積が時間と支出の効率のみを尺度にした競合に集中しているとき、自分らしさを楽しむ、ハラハラドキドキする買い物、ということを体験させてくれる買い物の場が極端に減っている。中心市街地に立地する商業集積、これから建設が予定されている集積は、このような消費者ニーズが直面している状況を踏まえてもう一度「デスティネーション」を再検討することが不可欠の課題となっている。

 たしかにマクロ環境は厳しいが、見方によっては効率ニーズ対応に一辺倒の経営戦略が個人消費の伸び悩み、ひいては我が国経済の低迷の要因と考えられないこともない。都心にわざわざ出かけてもらう買い物の場、として考えれば中心市街地の商業集積が実現すべきデスティネーションの方向は自ずと明かであろう。

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