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FLASH NOTE  2001 保存版   


F003■地域中小企業の困難と商工施策のあり方  (2001.6.5)   

 ご承知のように平成11年に中小企業基本法が改正され、昨年〜今年度にかけて施策が大きく変化しました。地域中小企業が直面する経営環境がきわめて厳しい折から、この政策転換をどのように認識し、どのように対処していくべきか、考えてみたいと思います。
 
1.基本法はどのように変わったか。

(1)認識の転換

 @いうまでもなく中小企業基本法は、国の中小企業に対する施策の基本を定めるものであり、中小企業の我が国経済における位置づけや役割、能力や環境条件などについて明らかにしたうえで、その役割・機能を遂行する上で必要な支援措置などの施策が講じられることになります。したがって、国は中小企業をどのようにとらえているのか、ということを理解することは中小企業者および関係者にとってきわめて重要なことです。

 A旧法は中小企業を大企業と規模的に比較して弱者と位置づけ、規模の拡大や設備の近代化などによる「中小企業的なるものからの脱却」が目指されていたと思います。その反面、弱者救済・雇用の場の維持という側面も持っており、一律底上げ、という施策も見受けられました。このような認識のもとで実施されてきた基本法−施策の総括がどのように行われたのか、制定過程の審議でも不明ですが、例えば商店街関係の施策等をみれば大きな問題を残していると思います。

 B新しい法律は中小企業の特質を、機動性、柔軟性、創造性を発揮する「我が国経済のタイナミズムの源泉」と位置づけ、中小企業の多様で活力ある成長発展を新たな政策理念として掲げています。施策もこれまでの弱者を意識したアプローチから新しい時代に積極的に挑戦していく意欲のある中小企業を選択して支援する方向へ大きく転換されました。

(2)施策のあり方 

 @このような新しい中小企業の位置づけに基づいて、小規模企業やベンチャー企業などが持っているそれぞれの弱点を克服し、創造性や機動性など中小企業ならではの独自の特徴を発揮し、活躍できるように政策体系が見直されました。
  
 A新しい法に基づく施策は、
 1.経営の革新・創業の促進(自ら頑張る企業の支援)
 2.経営基盤の強化(経営資源の充実)3.経済的社会的環境の変化への適応の円滑化という3本の柱が立てられ、それぞれに施策が設計されています。いずれの施策にあっても強調されることは「自ら頑張る意欲がある」ということです。
 実は私はここに新しい法が正面から見据えていない中小企業の陰の側面が問題として現れていると思います。
  
 B新しい施策の特徴は、基本法が掲げる「あるべき中小企業」を目指す意欲的な企業の挑戦を支援することが中心課題となっているということです。このこと自体は結構なことですが、多くの中小企業が直面している経営課題と照らし合わせるとき、地域にとってはきわめて重要な課題が発生していると思います。


次に地域中小業の抱える問題を見てみることにします。

2.地域中小企業が直面している課題

(1)地域中小企業の実態

 @地域中小企業の主流は、その事業機会を「地域の生活」や「生活条件の整備」という分野に存立しています。多くの企業が高度成長期からバブル終末までおあいだ、経済成長の恩恵をこうむりながら成長してきました。企業努力はもちろんですが経営環境も追い風が長いあいだ続いてきました。

 A人間は不思議なことですが、ある状態が長く続くうちに状態は変わるものだ、変わる環境への対応を準備しておかないと行けない、ということが頭ではわかっていても、ついつい明日は今日と地続きでありなんの苦もなく歩いていけると考えてしまいます。たしかに昨日と今日のあいだには目立った変化はないかも知れません。今日と明日のあいだもおそらくそうでしょう。しかし、私たちが気づかないところで変化は着実に進んでいました。
  
 B特に地域中小企業の場合、このことは特に顕著です。先に述べたように、地域中小企業は特別の地域を除いて、地域を顧客として事業を行っているものが大半です。地域の生活というのは本来的に保守的であり、目に見えて変化する、ということはほとんどありません。いきおい、企業の経営も地域の変化に対応する形でゆっくりとした変化でよかったわけですから。
  
 Cバブル期、華やかな表面の繁栄の陰で進んでいた地殻変動がバブルの崩壊と時を同じくして現れました。これまで誰もが明日も続くと信じて疑わなかった右肩上がりの反映が突如として停滞し始め、場合によっては後退し始めたのです。
 企業の寿命は平均すれば30年位とよく言われます。本当だとすれば、大半の企業は高度成長期の期間に創業され現在に至っているということになります。つまり、多くの企業が経済成長期の景観やノウハウはそれなりに蓄積しているものの経済停滞期の企業経営の経験はまったく乏しい、ということです。
  
 Dバブル以降の経済の停滞は、まっすぐに地域を襲いました。地域中小企業はこれまでのゆるま湯的な環境から一挙に放り出されてしまいました。市場の変化競争の変化が一挙に現れ、これまでの経験や能力に関係なくこの変化に対応することが必要になっています。この変化に対応していく能力を備えた地域の中小企業はたぶん少数派だと思います。

(2)地域中小企業の課題

 @現在地域の中小企業に必要なことは、
 第一に、これまでの経営実績が経済全体の成長期というバックグラウンドの恩恵を受けていた、ということをしっかりとかみしめること。
 第二に経営環境環境市場や経営環境の変化の実相をよく理解すること、
 第三にひとまず自社の状況をカッコに入れておいて、市場や事業機会に適合した「あるべき組織」を組み立ててみる、
 第四に自社の現状から「あるべき組織」に転換していくシナリオを作る
 第五にシナリオを実践するために必要な経営資源をチェックして    不足分の調達を図る等々、
 これまでほとんど取り組んだことのない性格の課題に取り組むことです。

 A課題は大きく三つに分けられます。
 第一に、転換のためのシナリオを描くこと。マクロの状況把握からミクロの実態までを把握し、自社の存立分野を決定して、あるべき体制を構想し、現状から転換していくおおおまかなスケジュールを作ること、です。高度成長期の間に創業され、順調に発展を遂げ、現在の環境変化を迎えている多くの中小企業にこのような大規模の転換に取り組むために必要な能力が準備されていることはほとんどないと考えられます。
 第二に、シナリオ実現に必要な経営資源の調達と編制を計画することです。転換は、人材、経営資産、財務構造など、経営を形作っているすべての要素について実態を把握し、あるべき姿への改革・改善に取り組んでいくことを意味するが、これには新しい資金確保が必要になる可能性が高い事は言うまでもありません。バブル崩壊以後の経営環境は多くの中小企業の体力を消耗させており、自力でこのような取り組みへの資金調達が可能なものは限られていることでしょう。
 第三に、転換に取り組むための時間の確保ということです。このことはこれまであまり問題にされたことがないと思いますが、とても重要な課題です。
 特に小規模事業の経営者は経営実務のあらゆる面で第一線を担当していることが多く、戦略的な業務に取り組むことの重要性を認識していても、必要な時間を確保することが大変困難な状況にあります。高度成長期までの経営においては、右肩上がり、という基準線を前提に対応策を考える、実績を基準にいっそうの向上を目指す工夫を考えるということでよかったわけですが、現在の環境変化に対応するには、環境変化の認識などより基本的なレベルからの見直しが必要であり、相当な時間を振り向けることが必要です。この時間を如何に確保するか、ということも大変難しい課題です。

(3)中小企業対策の方向

 @以上検討してきた中小企業の現状を見るとき、地域中小企業に対する支援の課題は、「基本法」に基づく、意欲的・創造的・自助 努力主体というような基準による選択的なものであると同時に、上で検討したような中小企業の実態に即した、経営者が取り組みやすく・活用しやすいあり方、長期にわたり計画的に支援する、総合的に支援する、ということが不可欠です。

 A特に、問題は経営者の課題に取り組むの時間の確保です。私どもはかねて、恒常的業務は戦略的業務を駆逐する、と考え対処の方法を提案しているところですが、「転換」という地道で長期にわたって取り組まなければならない課題への着実な取り組みを継続して行くためには、支援にもそれなりの工夫が必要です。

 Bまた、「転換」の方向についても的確な判断が求められます。今日の我が国の企業を取り巻く経営環境は厳しく、大企業といえども容易なことでは対応できないものです。このような時期、中小企業の転換の指導支援に必要なスキルをもった担当者を確保することはきわめて重要でありかつ困難な課題です。

3.対応のありかた

 以上、簡単に見てきた地域中小企業が直面する課題は、どれをとってみても取り組みが困難でありとても個別中小企業の力のみで対応できるところではありません。関係各方面の適切な支援・指導が必要な由縁ですが、ここでは特に市町村や商工会議所・商工会(以下、「会議所等」)が果たすべき役割と役割を果たしていくうえでの課題と対応について考えてみたいと思います。
 
(1)新しい状況
  
 @「基本法」に基づく中小企業対策は、ご承知のとおり、会議所等を経由して、地域支援センターが総合的な窓口となって推進することになっています。
 折りから、自治体合併の動きと相まって特に商工会の広域統合が推進されようとしており、これらの変化は基本法の改正とともに、地域中小企業が公的な施策を活用する環境条件が大きく変わることを意味しています。

 Aさらに、基本法は支援の対象を「我が国経済において中小企業の担う役割」のうち、革新的な機能、意欲的な企業姿勢をきわめて重視した方向を打ち出しています。特に「意欲」については自助努力ということが強調される方向で、施策の活用にも「自己負担」が原則となりました。見方では意欲の有無=自己負担の諾否と見られる可能性があります。特に地域中小企業を取り巻く環境がきわめて厳しさを増している今年度から多くの助成制度が自己負担を条件とすることになったことは、今後さまざまな影響が起こってくるのではないかと考えられます。国の財政事情などを考えればやむを得ないところなのでしょうが。

(2)地域社会・経済における中小企業の位置

 @このように地域中小企業の現状及び環境を認識すれば、地方自治体の中小企業対策はこれまでになく重要な課題となっていることが明かです。

 たとえ国のレベルでは選別が可能であったとしても、地域ではそうはいかない。特にいわゆる過疎地域、過疎化する傾向の見られる地域においては、ここで素描したレベルの中小企業が衰退していくことは由々しい事態であり、なんとしてもくい止めなければなりません。
 第一にやらなければならないことは、地域に存立する中小企業の地域社会・経済における位置づけをあらためて認識することです。
  
 A地域の中小企業のほとんどが、地域の住民により経営され、地域の住民を雇用し、地域のニーズまたは地域資源を対象として事業活動を営んでいます。

  地域にとってこのような既存中小企業が層として没落していくことは、地域の経済的なポテンシャルが低下するのみならず、雇用の場の減少、生活条件の劣化など直接の影響はもとより、労働力の流出によるコミュニティ活動の停滞など社会的活動全般の衰退につながるものです。

 B当初は、1,2の企業の転・廃業ということで企業自体の欠陥が原因として見られ、また、事実、問題のある企業から廃業に追い込まれていくことは事実ですが、手をこまねいていてはまじめに活動している企業も次第に追い込まれていくことが確実です。

 C前に述べたとおり、誰も経験したことのない環境変化のなかで地域中小企業は創造性、機動性などを発揮した対応が求められているものの、そのような特性を発揮できる条件にあるものは特に地域においては限られています。

 D地域はこの問題が地域の命運を左右するきわめて重要なものであるということを理解し、それぞれの地域や産業の特性を踏まえながら適切に対応することで地域の産業の活力を維持し、強化していく独自の施策を講じていくことが必要になっています。「地方の時代」という言葉がもてはやされた時代は既に終わりました。従来どおり、国の施策だけを頼りに手をこまねいていたのでは文字通り「地方受難の時代」の運命に見まわれることは明かです。

(3)課 題

 @問題への地域の対応は如何にあるべきでしょうか。
 重要なことは、現在直面している問題状況は、中小企業者のみならず、地域全体にってもこれまで経験したことのないものだということです。
 地域経済の振興、特に中小企業の指導支援を担当する行政、商工会議所等の担当部署にとっても未曾有の変化であり、これまでの仕事の経験・蓄積がほとんど生かせない、という状況が始まっています。

 Aもう一度確認しておきたいと思います。
 1.地域の経済・社会に大きなウエイトを占める地域中小企業は未曾有の環境変化に直面している。
 2.地域に立地し、主として地域の生活・産業を事業機会とする中小企業者のうち自助努力のみで対応の方向を見いだし、転換していく能力を持つ企業はきわめて限られている。
 3.新しい国支援施策は、中小企業の我が国経済における戦略的プラス面を重視、育成発展させることを主目的としている。
 4.行政は、地域の力を結集して企業活性化の新しい方向の提示、転換努力のあり方など、戦略的・体系的に指導・支援を行うことが求められているがが施策の展開が地域中小企業の環境対応・転換を図ることが必要になっている。
 5.この課題に適切に対応するためには、指導にあたる部署・団 体等がこれまで蓄積してきたノウハウのみでは困難であるというのが地域が直面している中小企業問題です。   
  
 Bよく言われるように、問題はどのような問題として認識するか、ということで解答も大きく変化します。悪い例をあげれば、現在の業績不振を「景気が悪いから」というように認識すれば、解決には「景気の回復」が必要であり、企業が自力で対応することは回復期まで持ちこたえるためのコスト削減など、規模縮小しかありません。この路線が無限後退の道であることは今ではよく知られていると思います。正しい問題把握が正しい対応への第一歩です。
  
 Cしたがって、正しい対応とは、Aで述べたような状況に直面している地域中小企業を「このように行動すれば活性化できる」という方向を見いだし、行動の内容を組織し、活動することです。
  
 Dもはや、「相談窓口」を開設し、相談に訪れた中小企者をそのニーズ毎に適当な指導機関や施策に基づく指導システムに紹介するだけで問題が解決されるというような生やさしい事態ではありせん。地域の企業・関係機関がこぞって戦略的な取り組みを構想し、恒常的に活動するという仕組みを作り上げることが必要になっています。
 
4.戦略的取り組み
(1)取り組みに先立って

 @繰り返すことになりますが、課題は、前項 (3)課題のAで1.〜5.に集約した問題状況を突破していくシナリオを地域の知恵と情報を駆使して構想し、既存及び調達可能な人材・資源・資金を効果的に組み合わせて活性化を実現していく仕組みを作り上げることです。

 Aこのときもっとも大切なことは、環境変化の根本的な要因が何であり、対応するには何が必要か、ということを正しく理解しておくことです。この問題については長くなりますのでここでは説明しません。私どもの認識については、このサイトの至る所で展開していますので、時間が掛かりますが是非確認しておいていただきたいと思います。
また、この欄でも近くあらためて取り上げたいと考えています。

 B戦略を立てるにあたって気を付けなければいけないことは、中小企業者など関係者に意見を求めてはいけない、ということです。 よく相手のニーズを把握してから施策の必要な分野、内容を決定する、というアプローチがとられますが、これは決定的に間違った手法です。採用してはいけません。
  
 Cどうしてでしょうか? それは中小企業者の多くは自分たちが直面している課題を的確に捉えているとは限らない、むしろ彼らのこれまでの経験の範疇で過去の経験で判断され過去のノウハウでの対応を考えているものが多数派と考えられます。このような状況でアンケート調査を行い、その結果を施策に直接反映させる、ということは活性化に向けて支援が必要な中小企業者に活性化のための施策を立てさせること、まず失敗することが確実です。
(以下次号へつづく)

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