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FLASH NOTE  2001 保存版       


F002■TMOがたどる茨の道 (H13.5.23)           

 『中心市街地活性化法』のスキームによって中心市街地〜中心商店街の活性化に取り組むとき問題となるのがTMOの機能と実態の乖離ということである。
 言うまでもなくTMOは、「中心市街地における商業集積を一体としてとらえ、業種構成、店舗配置等のテナント配置、基盤整備およびソフト事業を総合的に推進し、中心市街地における商業集積の一体的かつ計画的な整備をマネージ(管理・運営)する機関(『中心市街地中心市街地活性化対策の実務』通産省)」であり、中心市街地活性化基本計画』に基づく街づくり全体を統括・経営していく組織ということに位置づけられている。
 中心市街地活性化推進対策室によれば、これまでに基本計画を策定し終わっているた市町村が404(412地区)、TMO構想を認定されたところが136団体となっている。
すなわち基本計画を策定はした市町村のうち、その実施に向けた第一段階であるTMOの設置をクリアしたところがわずか1/3にとどまっている、という状況である。
私はここに中心市街地活性化という問題の隘路が見えていると考えるので、少し掘り下げてみたい。
 
 TMOは、元来、中心市街地活性化計画全体をマネジメントする組織として市町村が認定する組織であり、特定会社、商工会議所等が充てられている。その認定にあたっては、自治体が策定した『中心市街地活性化基本計画』に基づいて『TMO構想』を策定、自治体に提出して構想が認定されることが条件である。
 
 第一にTMOの性格に問題がある。『TMO構想』とは、中心市街地活性化基本計画に計画されている事業全体の実施構想ではない、基本計画に掲げられた事業のうち、「中小小売商業高度化事業」を利用して取り組む事業についての構想(TMO構想=「中小小売商業高度化事業構想」)のことである。
 この結果、法のスキ−ムにおいて基本計画をマネジメントする組織と位置づけられていたTMOは、現場ではTMO構想策定・事業組織として受け取られている例が少なくない。それも後に見るように、TMO構想や計画の提出窓口としてのみ機能すればよい、というように矮小化されているのである。
 TMOが本来の機能を果たすためには、相当高度なマーケティング能力、オーガナイジング能力、マネジメント能力が不可欠である。何しろ、空洞化が著しい中心市街地において既存小売店を中心に新しい商業集積を作り上げていこうとするのだから、並大抵の能力で担当できるはずがない。本気でTMOを作ろうとするなら人材の確保・育成に特段の工夫が必要である。
 他方、『TMO構想』に関わる仕事は、街区において取り組むハード事業に対する高度化資金その他の利用という手法レベルのことであるから、基本計画に組み込まれている施設等の整備計画のうち高度化事業の対象となるものをピックアップして計画すればそれでokである。さらに構想はあくまでも構想であり実施計画ではないのだから作る側も気楽である。実施段階でさらに慎重に検討する、という合意さえ作っておけばTMO構想は簡単に作られる。さらに構想する施設設置事業等がその性格上、商店街振興組合などがを事業主体とするものの場合、TMOは事業の対外的な窓口機関の性格を備えておればよい、ということになる。単なる窓口機関のためにわざわざ三セクを新設する必要は無い、ということで認定済みTMO組織136のうち、2/3にあたる95自治体において商工会議所あるいは商工会をTMOとするものである。
これは端的にTMO=中小小売商業高度化事業の申請窓口、という位置づけで設置したものであり、ここからたちまち当該市町村の中心市街地活性化に関する理論的な水準、実践的な習熟度が露呈してしまう。
 先にも述べたように、TMOが本来の機能を果たしていくためには、基本計画に掲げられたさまざまの事業をブレイクダウンして実施計画を策定し、全体の事業の中に落としこんで実施していかなければならない。少なくとも通常の都市の場合、「中心市街地における商業集積の一体的・計画的な整備」には、TMO構想に該当する事業だけでは不足である。特に商業集積としての活性化を実現していく上でもっとも重要な事業はテナントミックスの運営であるが、他にも行政、民間それぞれが取り組むべき事業で他の事業と連携を取りながら進めなければならない事業は多い。もちろん、これらの作業はいわば、「あたりまえ」のこととして法のスキームには明示されていない。
 これらの事業の実施についての合意形成や計画策定を伴わないまま、法の形式的なスキームに基づいてTMO構想の策定に走ったところは一様にTMOを単に「中小小売商業高度化事業(以下TMO事業)」の対外的な窓口という認識に終始してしまっている。いわゆる「調整型TMO」といわれるタイプである。区域内の商店街組織等に希望する事業を提出させ、そのうちTMO事業に該当するものについて構想を策定、市町村に退出して認可を受ける。実施計画は、各商店街の取り組み体制の整った順に、というわけである。TMOをこのようにTMO事業の窓口という機能でしか考えられない関係者に中心市街地活性化事業の総合的なマネジメントなど出来るはすばない。もっとさかのぼれば、本当に中心市街地を活性化できる基本計画が策定されているかどうかということさえ大いに疑問になってくる。百歩譲ってこのTMOが中心市街地全体の事業を調整する役割をにない得たとしても、その延長線上に中心商店街の活性化、ひいては中心市街地の活性化は望むべくもない。
 現に、TMOによる中心市街地活性化の先行事例が直面している問題は、TMO事業を完了した後の中心市街地活性化の推進如何に取り組むかということと、今後のTMOの機能と役割である。TMO構想の策定・TMOの認定−TMO実施計画の策定−実施というTMO事業の一連の流れに基づいて事業を完了したものの、それだけではもちろん街の活性化は実現できない。今後は整備した施設・設備等を活用しながらテナントマネジメントなどソフト面を中心に事業を展開しなければならない。高度化事業の窓口機能は終わったが、市街地全体の整備運営は今後もさらに続いていく、というよりいよいよこれからが本番というわけである。ところがその取り組みをマネジメントすべきTMOには任務を遂行するために必要な人材・ノウハウが全く準備されていない、ということである。先行するTMO事例のうち、事業がもっとも進捗している事例でこのような状況が起きており、今後各地でTMO事業が竣工するにつれて同じような隘路に直面するところが増えてくることは間違いない。
 もって他山の石、これからTMO組織を作っていこうとするところは、以上に鑑み、TMO構想以外の事業の推進特に「中心市街地全体の商業集積をショッピングモールと見なした整備」の内容およびマネジメント主体について十分検討しておくことが必要である。
 
 第二の問題は、上記とも大いに関係するが、『中心市街地活性化基本計画』をマネジメントするために必要な能力を如何に調達するか、ということである。中心市街地の商業集積を一体的・計画的に整備し運営していくということは、とりもなおさず、中心市街地の商業集積を一個のショッピングモールと見立て整備していく計画(転換計画)の作成し、推進していくということに他ならないが、言うは易し、これは未だかって我が国では一度も実現されたことのない大事業への取り組みを意味しているのである。
 
 活性化の方向として,国が素描する「ショッピングモールへの転換」を目指すとすれば,TMOの役割は,ショッピングモール(以下、「モール」という)の運営主体ということになる。即ち,TMOの当面の任務は,「中心商店街からモールへの転換」を推進することである。転換にあたって取り組まなければならない仕事はこれまでに述べてきた,モールの基本設計(ハードに当該都市において排他的に担う商業機能の設定)から機能の整備・運営まで,モール経営に関わる一切について担当しなければならない。特にモールという我が国ではほとんどノウハウがない商業集積への挑戦であること,モールの主役となる既存個店の「転換」という課題を内包していること,等々で相当に高度な能力を必要とすることになる。問題はこのような能力を持つTMOをどのようにして確保するかということである。
 
 TMOをどのように編成するかということは,モールを志向するか否かということには関係なく、いずれにしても実務担当者には頭の痛いことである。組織形態はともかく、実際の構成はおそらく地域内の各種団体から肩書きで集めた役員会とどこか関係機関OBの専従役員,執行幹部も概ねアマチュアという陣容になるのが通常であろう。
 この時期に中心市街地を活性化するという仕事は、このようなアマチュアの集合をもって何とかこなしていける、というような仕事ではない、ということをしっかり認識しなければならない。今日、例えばテナントミックスなどの機能は、郊外型ショッピングセンターのデベロッパーなどには備えられていると信じられているが、彼らの能力の程度ではモールへの転換は不可能である。このことは百貨店も同様。相次いで伝えられる中心市街地あるいは郊外に新規に開設された大型商業集積の低迷はこのことを証明するものである。
 それでは、TMOを担う人材・能力をどこから調達することが出来るのか。
事務担当として商工会議所等から経営指導員などが出向するケースも有り得るが、通常、彼らもまたモールの経営についてノウハウや識見を有しているとは考えられない。
事業団のタウンマネジメント養成講座などにより基本的な知識を取得したにせよ、まだまだ不十分である。モールへの転換とはTMO事業から個店の店づくりの転換まで、多岐にわたる事業を平行して進めなければならない、一大プロジェクトであるが、そのプロデユーサーとなるべき人材を文字通り「鐘や太鼓」をもって確保しなければならない。しかしながら、全国的に見てもこの能力はきわめて限定されると思われる。
 したがって,当面は外部からの指導・助言を受けながら推進することになる。
 
 第三に、この指導の内容が問題である。公的な支援制度として「タウンマネージャー」の派遣制度をはじめとする指導,助言制度が設置されていることは周知の通りである。ところがこれらの支援制度を担う専門家がほんとうにこれまで述べてきたような役割を担わなければならないTMOを指導していくために必要な能力を有しているか,ということに大いに懸念がある。法ではTMO=高度化事業構想推進者となっているところから,公的に準備されている支援制度もTMO事業構想及びTMO実施計画の策定の支援を中心課題にしているために、タウンマネジャーも高度化事業や再開発事業、商店街活性化事業などの指導経験者を中心に編制されている公算が強い。
 現下の状況において、これまで点的、線的な取り組みであったため、成果が乏しかったと総括される当の事業の推進を支援してきた人たちがそれを越える質と規模の事業の指導・支援が出来るかどうか、懸念が残るところである。まして、今回はこれまでに例のない、モールへの転換という一大総合プロジェクトである。中でも中心課題となる既存商業のモールへの転換の指導となるとなおさらである。これまで一般的な再開発や高度化事業関係に従事してきたコンサルタント等の力量(技術・知識・経験)でこの事業を指導するという役割にになわせるのは,かなりミスマッチではないだろうか。もっとも,いうまでもなく,能力には個人差があるので、これまでの事業では発揮できなかった高度化事業計画の策定以上のノウハウを有する指導者もなかにはあるのだろうが。
 
 いずれにせよ地元としては否応なく指導・支援能力を調達しなければならないわけであるが,TMOに必要な能力がそう簡単に見つかるはずがない。
先述したように、このことはTMOの組織形態に関係なく,殆どのTMOないし都市の関係方面が直面している,あるいはこれから思い当たることになる問題である。先行事例のトラブルなどを見聞するにつけ関係者は,「轍を踏まない」ことを心に誓うわけだが,何から如何に始めるべきか?
 
 まずは、中心市街地活性化とはほんとうに画期的なプロジェクトになるべき事業であり、そのような取り組みでなければ単一の施設、商店街の活性化も実現できない、ということを肝に銘じること。第二に、転換の目標となる「ショッピングモール」について明確なビジョンを持つこと、この2点をきちんと整理できれば自ずと「何をなすべきか」ということが明らかになってくるはずである。われわれは、本サイトにわれわれが考える中心市街地活性化に関して、出来る限りの資料を掲示している。また、今後とも逐次充実させていくつもりなので参考にしていただければさいわいである。
 
 以上、簡単に検討してきたように、TMOは現在度の段階にあるのかを問わず、厳しい道程の途中にある。上述したような課題を最終的にクリアした後に正真正銘の課題が待ちかまえている。「中心市街地の商業集積をショッピングモールに転換」させた、モールに繁栄を実現すること、である。
 
 さまざまな立場で、中心市街地活性化を推進する巡り合わせとなった皆さんは、前人未踏の大事業に取り組むチャンスを与えられたことを喜び、不退転の決意で事業に取り組んでいくことが必要である。5年、10年後の皆さんの街の有り様は、今現在、あなた方がどのような問題意識を持ち、何に・どう取り組んでいるか、ということに掛かっている。


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