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2-[5] 小売吸引力理論批判

問題の所在

 小売業の出店計画等において利用されることが多い,特定の商業集積が周辺地区から集客する際の潜在的な集客可能性を算定するモデル理論を方法論レベルで検討し,それらが特定の時代の小売業の形態及びその集合と往時の購買行動の相関としての現象を通時的・一般的な小売業のあり方として根拠も無いまま敷衍した結果,現実と全く関係のない,文字通り机上の空論となっていることを論証する。
 検討の対象とするのは,いわゆる,「ライリーの法則」,「コンバースの定式」,「ハフ・モデル」,「修正ハフモデル」であるが、とりあえず以上の代表として「ライリーの法則」を取り上げる。

T.検討の方法

1.特に『ライリーの法則』を析出する仮定については,疑義をはさまない。
 すなわち,ライリーが法則性を提起した時点では,「ライリーの法則」が対象を説明する能力を持っていた,ということについては争わない。

2.『ライリーの法則』が経験則として成立する条件を明らかにする。

3.その条件が成立する環境を明らかにする。

4.その環境与件は,現在ではもはや存在しないことを論じることで,ライリーの法則がもはや吸引力測定の経験則として利用することが出来なくなっていることを明らかにする。

5.コンバース,ハフ,修正ハフ各「理論」のライリーの法則との関係を明らかにし,いずれも基本的にライリーを踏襲・改良するというレベルであること,従って,これらももはや期待されるような道具と しての価値を失っている,ということを明らかにする。

6.ついでにこのような文字通り時代遅れの手法が,ある種のお猿さんたち(自分を「コンサル」などと猿呼ばわりして恥じない人々)によって,何の反省的作業も無いまま,使い続けられている理由について考察する。




U.ライリーの法則について

1.問題の所在 
(1)よく知られているように,これは,「二つの都市の間に存在するコミュニティ から両都市に流出する購買力は,両都市の人口に比例し,距離の二乗比に反比例 する」という「法則」である。
(2)「ライリーの法則」とは,当時の条件下において,米国におけるコミュニティから外部への購買行き先の分布状況を数式で表現すれば,この数式が近似である, という意味である。
(3)「法則」といいながら,もとよりこれは「現状了解の道具」であり,経験則の常として,「過去の経験で未来を測る」という側面を持つ,従って,利用するにあたっては,その経験則がどのような状況下における傾向を集約した情報なのか,ということを明確にしておくことが必要である。
  原著にあたったわけではないので,ライリー自身のこのあたりへの目配りについては何ともコメントできないところであるが・・・。 
(4)検討は,次のように行う。
  @ライリーが調査研究を行った時点においては,その数式が近似を表す
   ような購買行動があった,「経験則」として妥当であった,ということは
   争わない。
  Aライリーの法則が妥当であったとして,当時,どのような根拠があって
   法則として成立したか,ということを論じる。さらにその根拠が当時のど
   のような生活条件に起因するか,ということをあきらかにする。
  B『ライリーの法則』の根拠となった社会的条件の変化を検討する。
  C『ライリーの法則』がそのもっとも基本的なレベルで成立しなくなって
   いることを論じる。
  D同様の仮説に立つ他の諸「法則」も成立しないことを論証。
  Eおまけとして「お猿さん」批判

2.検 討
  購買力の流出とは見方を変えれば小売業の購買行動に対する吸引力ということである。ある都市がその周辺のコミュニティから購買行動を吸引する力が当該都市の人口及び都市までの距離と関係がある,というのはどういうことを意味しているか。
 (1) コミュニティとは
  @アメリカにおけるコミュニティとはなにか。これは日常生活圏とも言うべ
   き概念で,当時における日常生活のほとんどがその域内で間に合う,
   という日常生活共同体のことである。日常生活に必要な施設,教会,
   小学校,スーパーマーケット,ガソリンスタンドなどの施設が揃ってい
   る。いわば最寄り生活圏とも言うべき地区のことである。
  Aライリーが測定しようとした購買行動は,コミュニティから都市へ流出
   する購買力,すなわち,「最寄り」ではなく,「買い回り品」と呼ばれる商
   品についての購買行動である。

(2)流出するのは「買い回り型購買」
  @ライリーが主張する経験則は,「買い回り品」に限られる,ということを
   まず確認しておかなければならない。最寄り品についての購買行き先
   はコミュニティ内部に立地している,ということが前 提であるから,都
   市がコミュニティから購買力を吸引するのは「買い回り」型購買であり,
   従ってその吸引先は,「買い回り商店街=ダウンタウン」ということにな
   る。
     つまり,「ライリーの法則」における吸引力とは,都市が周辺コミュニ
   ティの買い回り型購買を吸引する力=当該都市の買い廻り型商店街の
   吸引力のこと である。
  Aライリーの法則は,買い回り型商店街の魅力は,都市の人口に左右さ
   れる,都 市の人口が買い回り型商店街の吸引力を決定する,と主張
   しているのである。

(3)買い回り商店街とは
  @買い回り商店街とは,読んで字のとおり,「買い回り品」を販売する店
   舗が連袂(レンベイ=たもとを連ねる)する商店街のことである。「買い
   回り品」自分の期待に叶う商品を求めて何軒かの同業種店を見て回り
   ,自分の期待するところを基準に商品を比較検討して購買する商品を
   決める,という購買慣習が一般的な商品をいう。ファッションなどがそ
   の代表である。
  A買い回り商店街の規模は,当該商店街を買い物行き先にしている人
   たちの数,すなわち,もっとも基礎的には人口によって決定されるのが
   ,プレSC時代の商業環境であった。人口が多い,居住及び流入人口
   が多いということは,その生活を当該都市の都市機能に依存する人が
   多いということであり,すなわち,購買力が多い,ということを意味する
   。購買力が多いところにはさまざまの様態の小売業が立地し,自然成
   長的に、より細分化されたニーズに対応する商業機能や関連サービス
   業機能などが充実してくる。個々の店舗の魅力だけではなく,商店街
   全体がコミュニティからわざわざ出かける場所としての魅力を帯びてく
   る。
  B当該商店街を購買行き先とする人口が多い商店街ほどそこに立地す
   る業種・業容の多様性が増す。広域での各様態の商業の分布状態に
   ついては,本論の対象外なのでとりあえずフィールドワークに基づく階
   層理論を念頭に置かれたい。
(4)都市の小売吸引力
 @買い回り商店街の成立
   都市中心商店街を取り巻く区域にはコミュニティが分布している。これ
   らのコミュニティの住民が中心市街地を訪れる,そのチャンスを買い回
   り型小売店のビジネスチャンスとして活用するのであるから,その事業
   戦略は次のようになる。

  1.コミュニティ立地の小売店では取り扱うことので出来ない分野,レベル
   の商品を販売すること。   
  2.街区内に同業種が既に立地しているときは,既存店舗と差別化を図る
   こと。
  3.商店街にまだ出店されていない業種や業態の店舗を出店すること。

   いかがだろうか。こうしてみると,人口が多い都市ほど小売の事業機
  会が豊富であり,多種多様な店舗が成立するのでコミュニティの住民か
  ら見れば,自分のニーズを充足出来る蓋然性が相対的に高いことが予
  測される,したがって周辺のコミュニティの購買力をますます引きつける
  ,ということになる。それを見た商業者の新規出店が相次ぐ・・・・という
  スパイラルで中心商店街は商業集積としての全体計画は無いまま,ま
  すます肥大化し,さらに吸引力を増大していく。
 A買い回り型商店街の吸引力の特徴
   競合する都市A及びBの中心商店街は,いずれも自然成長的に発展
  してきたものでり,その発展は市場の力すなわちそれぞれの商圏の潜
  在購買力=人口に左右される。そこに立地する業種・業容の多様性は
  ,個々の商店経営者たちの事業機会確保という動機の集合に他ならな
  い。全体としては計画されない集合が選択されるのは,集合の大きさが
  選択の幅を拡大する,という期待による。
   計画された商業集積が登場しないライリーの時代,買い物行き先の選
  定は店舗が多い街ほど気に入る商品を見つけだす蓋然性が高い,とい
  うことで決定されていた,ということである。
 B流入を阻害する要因
   都市人口と小売吸引力の関係は,吸引する力=集積としての充実は
  ,都市人口(周辺を含む)と買い回り型商業の集積量との関係のことで
  あり,行き先への排斥力としては,コミュニティから当該商店街に出かけ
  るために必要なコストである。
   主要なコストは,所要時間と交通経費であるが,ライリーの時代,その
  コストは移動しなければならない空間距離に比例するものであった。吸
  引する魅力と阻害する距離との関係については検討しない。小論はそ
  のレベルで「法則」を批判するものではないから。

 Bあるコミュニティから,都市Aおよび都市Bに買い物に行く蓋然性すなわ
  ち,購買行き先の決定は,各都市の中心商店街の店舗ミックスの充実
  度合いとそこまで往復するために支払わなければならないコストとの比
  較検討の結果によって決定される,というのが「ライリーの法則」(及び
  その亜種)の基本的な視点である。

 Cすなわち,「ライリーの法則」は2つの前提条件(仮説)のうえに成立す
  る。
   第一に,人口の多い都市ほど買い回り型商店街が充実している。
   第二に,人は買い物行き先として,より充実した商店街を志向する。
  
  以上の2点の現在における妥当性をを検討し,論駁することで「法則」の
  有効性を覆すのが小論の目的である。

2.小売集積の変化と『ライリーの法則』
   以下は現在休止中です。 興味のある人は下記を参考に自分で考え
  て見て。

(1)「業態」の出現による自生的集積の吸引力の減衰。
 自然成長的集積の場合,来街目的である買い物に成功するかか否かは,集積規模をめどに判断するしかなかった。買い物の成功は確率的であり,ライリー的な仮説が成立する可能性があったことは前述のとおり事実である。

(2)業態店舗は想定する顧客の生活ニーズに対応した商品構成,提供システムを構築 しているこれまでの商店街には見られなかったタイプの小売業である。特にGMS は,従来百貨店などが主要に販売していた買い回り品を「大衆」に普及させるうえで大きく寄与した。
 さらにGMSを核とする郊外型SCなど相対的に限定された購買目的に集積ぐるみで対応する「計画的集積」が登場して,自生的な集積に深刻 な打撃を与える事態が日常的となった結果,ライリーの法則及びその亜流たる諸 々の「法則」なるものが成立する根拠であった「自然成長的商業集積」間の吸引 力仮説そのものが無意味となった。

(3)いまや,集積間の競争(吸引力)は,特定の購買(来訪)目的から見ていずれの集積がより機能が充実している か,ということをめぐって争われていることはいうまでもない。さらにその集積がどのような背景に立地しているかということも特に問題ではなくなった。
 ライリー的にいえば,行動範囲内に存在する複数の集積のいずれを購買先として選択するか,という時の基準は特定の購買行き先としていずれがより充実しているかということである。

(4) ね,だから実務でいっくら計算しても出店してみるとプラスだったりマイナスだったり結果は変幻自在なわけよ。
 人口規模を売り場面積に変えたって基本的な仮説としてのいたらなさは一緒だ からね。づーたいばっかでかくて中身がスカスカの30,000uよりも来店目的をきっちり実現している15,000uの方がお客にとっては使い勝手がいいんだから。そっちの方に行っちゃうわけ。距離?時間距離?んなものは2の次でしょーが。 
参照:ライリー、ハフ 購買力吸引理論の批判

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