「日本一元気な商店街」としていまや全国的に有名になった佐世保市の中心商店街。
中心商店街を活性化するには人出を増やすことが一番、居住を増やし・目的は不問、来街者を増やせば街は活性化する、疑うものは佐世保を見よ、という説まである。ご承知のとおり。
ま、何を言おうと勝手といえば勝手でありまして、同時に何を信じようがこれまた自己責任でどうぞご自由に、ということですが、そうとばかりは行かないところがある。
このような謬説が活性化への本道だと理解され、それらしい施策がメインで取り組まれますと、まともに取り組めば本当に繁盛店が作れるのに、違う方向に行ったりしますからね。この街がそうだというわけではありませんが。
中心市街地活性化の方向と方法として「人口・人出増大策」以外を選択している都市・人たちにとって、人出万歳的主張が主流を占めるような状況はけして良いことではありません。
こういう話が広がると、商店街の繁盛再現は「自助努力」抜きではあり得ないのだということを認めたくない?人たちが「やっぱりそうか・そうに違いない・目から鱗が落ちた」などと尻馬に乗り、やがて大勢を占めることにもなりかねません。そうしますとおそろしや多勢に無勢、王様って裸じゃん、と言い出せなくなってきます。
口をつぐんだまま、全国の中心市街地があらぬ方向に押し流されていく、というのはヤですよね。
商店街に限らず、似たようなパターンは時とところを問わずこれまでよくあった話です。
サイレント・マジョリティって怖いですよね〜、黙っていると声の大きい方に算えられてしまうんですから。
佐世保市中心商店街をテーマにあらためて考えてみたいと久しぶりに行って参りました。ちなみに商店街というのは「定点観測」ということが大切でありまして、定期的に観測する地点を類型別にどれくらい持っているか、それはどことどこなのか、そこを選んだ理由は、といったことをよどみなく説明できるか否かということが専門家の第一歩ではないでしょうか。
では佐世保市四ヶ町。
とりあえず、にぎわいぶりを紹介します。(写真・右)
歩いている人の服装・表情・グループなどもチェックしてください。
そこが何であるかは、「何があるか」よりも「何が起きているか」で判断する、というのが当社のおすすめウオッチングです。
日曜日の午後3時、老若男女、いろいろな人が歩いています。
「核」店舗は百貨店の玉屋とGMS・ジャスコ、それにファッション専門店・西沢。
特記しなければならないのは、デスティネーションストア(この店があるからこの街に来る)として、他都市では郊外に立地していることが多いディスカウント訴求のカテゴリーキラーが多種多様に立地していること。
これらの店舗はそれぞれねらっている客相にとって「来店目的」をそれなりに作っていることでしょう。
(写真・中)
商店街の特徴を一言で言えば「価格訴求」ということでしょう。端的に言って、ここは「価格訴求」に「自然成長的に」特化している商業集積だと総括することが出来ます。もちろんぴかぴかの専門店も立地していますが、文字通り「散在」という状態で、目立ちません。通りはおおむね価格訴求一色です。
ここに立地している専門店は「集積効果」つまり「他店のお客が自店のお客になってくれる」と言うことがほとんど期待できません。それぞれのお店が自店の顧客からみて「あの店があるから四ヶ町にショッピングに行く」という関係を作り上げているわけですが、同類型のショップからの「回遊」が期待しにくい。
標的客相との間に「得意⇔行きつけ」という関係を作り得たお店だけが専門店として存続しており、そういう店づくりに至らなかったところは店頭・価格訴求型に変貌していった、ということではないでしょうか。
では、専門店としてがんばっているところが順風満帆かと言えば、残念ながらそうとはいえません。
雑踏型立地は吟味−堪能型ショッピング向けショップの立地としては余りOKとは言い難いのです。
このあたり、四ヶ町が今後名実ともに佐世保市の中心商店街、ショッピングモールとして再生を目指すとするならばヒントになることがたくさんあると思います。
ショッピングモールを目指すとした場合、四ヶ町の優れた利点は、「人出だけでは商売にならない」ということを街ぐるみで経験している、ということです。
いざ転換に取り組むと決断すれば話は早いのではないでしょうか。
目下、専門店グループは多勢に無勢という状態でしょう。
2階立地のブティックが赤札付き商品満載のハンガーラックを路面入り口に並べていたりします。
明らかに露店商売に転換しているわけです。
いずれにしろ、中心商店街でこれだけ価格訴求に特化しているところは珍しいと思います。確かに人通りは大変多く、ちょっと見には元気がありそうですが、実際のところ、その現在〜将来の業績は後ほど述べるように、きわめて厳しいと思います。
店揃えは、家電・カメラ・ドラッグ・めがね・百均などなど、類似規模の都市なら郊外に展開しているディスカウント業態が目白押し・軒を連ねている、と表現して過言ではありません。専門店的な規模の婦人、ヤングなどの衣料品その他の「商店街業種」的な店舗にも価格訴求型が目立ちます。(写真・中、右)
ワゴン、ハンガーラックなどに低価格品を山積み、店頭・モールにはみ出して赤札で訴求しています。
情⇔景的には、店前通行人を安さでキャッチして衝動購買させる、あわよくば店内に導入してプロパーの商品を買ってもらいたい、ということで空き店舗率の高い商店街の商法と全く同じです。
もっぱら店前通行量だのみ、通行人が衝動購買客に変身することを期待する「縁日型」「露天型」の業容がほとんどであり、ショーウインドなどで入店誘導・接客型、つまりいわゆる「専門店」は本当に少ない。
これは他都市の中心商店街と大きく異なるところです。
四ヶ町の場合、少数見かける婦人服、靴店なども苦戦している模様が歴然です。
物販以外では、ファストフード、コーヒーなどの飲食とパチンコ、ゲームセンターなど、繁華街型あるいは郊外型の業種が出店しています。
上述したように、ここに立地しているディスカウント業態は、一般には郊外に展開することが多いのですが、佐世保市の場合、郊外(中心部から西南部)にも集積している上になお、中心市街地も一大集積地となっているのです。
これにはちゃんと理由があるのですが、ここでは省略します。しっかり確認したい人は次のスレッドをどうぞ。
http://www.quolaid.com/cgi/tkf/wforum.cgi?no=195&reno=193&oya=187&mode=msgview&page=0知る人ぞ知る、四ヶ町を全国区に押し上げた藻谷さんの言説を検討しています。
「三点セット」の本格的な検討はまたの機会として、ここでは以下、気づいたことを列挙しておきます。
◇価格訴求
多くのアーケード型&空洞化著しい衰退過程に入っている商店街に共通して見かけられる業容、店頭に低価格品を山積み陳列して価格訴求する露天型の商売。この商店我でもよく見かけられます。
一般的な商店街と違うのはカテゴリーキラーを含めてそういうタイプの店舗が軒を連ねている、「集積」を形成しているというところです。
だからといってこれらかての専門店が転向した価格訴求型の店舗が集積効果を享受できているかと言えばそういうことはほとんどありません。
デスカウント専門業態ならぬ商店街立地のかっての買い回り型専門店が価格訴求に転向する一般的なメカニズム。
@お客が来店しないので店頭に低価格品を並べて価格訴求する、
A興味を喚起されて足を止めたお客を店内に誘導、
Bプロパー商品を買ってもらいたい、
というどこの商店街にもよくある見え見えの仕掛けですが、もちろん足を止めるのは店頭の価格訴求に興味がある人だけ、この人たちが「どうせならもっと良い商品を」と店内に入ってくる可能性、皆無とまでは言いませんが、きわめて少ないでしょうね。
一方、きちんとショーウインドなどでアピールしていたなら、ひょっとしたら、入店してくれたかもしれないプロパー商品の潜在顧客は、店頭の情⇔景から「私のための店ではない」と判断することでしょう。
通り全体が価格訴求に特化している印象ですが、大別すれば@郊外型カテゴリキラーの出店と A従来型専門店の変容 という違いがありましてそれはそのまま業績に反映していることでしょう。
さらに、従来型の専門店の低価格路線には自ずと限界がありまして、きちんとしたマーチャンダイジングができる訳ではありませんから、専門ディスカウント業態、SPAなどにはとうてい太刀打ちできません。前方には赤信号が見え隠れしています。
もちろん、ここに立地しているディスカウント専門業態が順風満帆というわけではありません。
が、それはまた別の話。
◇空き店舗
ひと頃はほとんどゼロに近かったとのことですが、増えているようです。もちろん空き店舗は、減ればいいというものではありません。商店街既存の店舗が繁盛しだした結果、空き店舗を利用した出店が増える、結果として空き店舗が減った、ということでないとあまり意味がありません。
どうしてか?
自己都合だけで出した場合、新規出店が成功する・しないに関わらず、空き店舗が増えた背後の事情はほとんど改善されません。既存個店の経営状況・問題状況にはなんお効果もありませんから、早晩、廃業する店がこれまで同様続くことは当然です。
四ヶ町の状況もこのような趨勢を免れているわけではありません。
空き店舗が埋まればその分人通りが多くなり、既存店に好影響が出る、とお考えの皆さんにとって四ヶ町のケーススタディはおすすめです。
スタディの結果、私の分析が間違っていることが分かればそれはまた結構なこと、全国の皆さんに「モデル事例」があることになる。
◇外人客
佐世保といえば戦前は日本海軍、戦後〜現在は日米両海軍の御用達需要があります。
もともと街の起こり自体が海軍の造船基地が開設されたところからの始まりです。
カメラ店などが多いのは、特需があるから、ということも聞きますが、現在はどうなんでしょうね。
歩いている外人さんの数も少なく、特需と言うほどのことはなさそうです。
◇上位都市
長崎市まで電車で一時間半くらいでしょうか。昔から買い回り品は流出しています。都市として成熟度で一日以上の長がある。
加えて高速道路開通以降は福岡への高速バスでの流出が著しい。
もちろんこれは佐世保市に限ったことではありません。
地方都市の買い回り品は上位都市に流れる。中心商店街は郡部御用達という傾向もありますから。四ヶ町の場合、地元にとどまっている中心商店街向け購買ニーズ=買い回り〜ラグジュアリィニーズの受け皿としての機能がきわめて劣っています。
かって、市に隣接する佐賀県西部の小都市、伊万里、武雄などからの流入はもはやほとんど期待できません。
◇郊外との関係
いまや商店街の主流を占めている低価格路線は郊外型ショッピングセンターのモールに出店しているテナントよりもロワーな価格帯です。
通常、四ケ町でショッピングをしている人たちにとって、ショッピングセンターのモールは買い物行き先としては「ハレ」かも知れません。
郊外型ディスカウント業態が四ヶ町に集中立地している理由については、【都市経営フォーラム】に書きましたのでそちらを参照してください。
中心部から北西にかけては、郊外型商業集積は皆無であり、遠く平戸市に至るまで本来?なら郊外でストップするはずのニーズが「低価格訴求」の四ヶ町まで流入しています。この趨勢は、同方面に郊外型集積が開設されればきわめて大きな影響を受けます。四ヶ町の低価格路線がしまむらをはじめとするカテゴリーキラーと渡り合えることはありません。
◇専門店
もちろん、買い回り〜ラグジュアリィニーズ対応の専門店も立地しています。
健闘が伺われるショップもありますが、もちろん、店頭通行量がその原因ではありません。四ヶ町の人出がふらふらっとこういう専門店に入ってきて買い上げ客になる、というのはきわめて少ないと思います。
◇イベント
四ヶ町はイベントで有名らしい。どうして人出が多いのか誰もわからない、といわれる四ヶ町ですが、ひょっとしたらイベントのおかげかもしれない、という話を聞いたことがあります。果たしてそうでしょうか。
なにを目的にどういうイベントを催しているのか、その結果、イベント来街者が翌日買い物客として来街する、というシナリオが出来ているのかどうか?
◇展 望
【都市経営フォーラム】でも述べていることですが、相の浦、大野地区などに郊外型集積が出現すると一大事です。ただし、同地区以北の住民のニーズは高まる一方でしょうし、ジャスコvsゆめタウンの出店競争もありますから・・・。
玉屋、西沢は通行客相とは無関係の商売であり、もはや立地条件が変わってしまっており苦戦は当然かもしれません。
以上、バカに厳しいじゃん、と感じられる人もありそうな評価になりましたが、これはあくまでも「現状」についてでありまして、将来についてしっかり手を打っていけば、現在の状況をプラスに活かしていくことができることは言うまでもありません。
ここでの問題意識は「中心市街地活性化」の実現に向けて、佐世保市中心商店街だけがなにやら訳の分からない(だって「誰も分からない」そうですから)特権的な位置にあるわけではない、ということが論じられたと思います。
人出が多ければ万々歳、と主張されるコンサルタントさんはともかく、それを真に受けて人出集めに血道を上げているみなさん、それでホントにいいんですか?ということです。
◇三ヶ町
アーケードなどの施設がリニューアルされています。
市役所よりの立地で、行きはよいよい、帰りがだんだん遠くなる、ということで駅方面からのお客には距離的に敬遠される位置関係です。
食品を中心にがんばっているお店が多い。
熊本の上通り〜下通りの関係を思い出しました。
◇参考:大須商店街
辛口になりましたが、「奇跡の商店街」という評価への反論と言うことからあしからずご容赦賜りたく。
興味のある方は、名古屋市大須商店街と対比させて考察されるといろいろ見えてくることがあるような気がします。
ということで「日本一元気がいい」と折り紙をつけられた佐世保市の中心商店街ですが、せっかくの折り紙を喜んでいる人は地元関係者の中にただの一人もいないことは確実でしょう。
機会がある人は直接来てみられたら如何でしょうか。
四ヶ町にとって活性化への道は決まっておりまして、現在、少数派ながらがんばっている専門店(物販・飲食・サービスを問わず)を中心に「ショッピングモールへの道」を構想・実践することです。
現在デスティネーションを形成している主力カテゴリーキラーは、いつ何時連れだって郊外に出奔するか分かりませんからね。
そのときになって騒いでも遅すぎます。
まずは「なぜ人通りが多いか分からない・コンサルタントから日本一元気がいいといわれた」という情況から脱か出す、集積類型としてのショッピングモールを目指す、という意志決定に向けて動き出すことが必要ではないでしょうか。